誰も考えようとしなかった 癌の医療経済**中外医学社/國頭 英夫/978-4-498-14846-8/9784498148468**
発行 2023年7月
判型:A5判 240頁
ISBN 978-4-498-14846-8
著:國頭 英夫(日本赤十字社医療センター 化学療法科 部長)
監修:田中 司朗(京都大学大学院 医学研究科 臨床統計学講座 特定教授)
m3.com連載「Cost, Value and Value trials」を書籍化
医師にとっては「医療経済」という言葉を縁遠いものと感じるかもしれない.実際,薬価がいくら高額になっても医師の給与に影響せず,患者にすら影響は少ない.しかし「命のためなら無限にコストを注ぎ込む」ことは結局のところ次世代の犠牲を強いることになる.m3.comの人気連載「Cost, Value and Value trials」を書籍化した本書では,医療の費用対効果分析やその問題点について詳説する.
【目 次】
Chapter1 医薬品の費用対効果分析総論
“Value”を重視した治療開発のために医師が考えるべきこと
Chapter2 Value評価の潮流その1
効果が大きくない薬ほど、「大規模試験」で高い薬価に?
Chapter3 Value評価の潮流その2
新薬の“benefit”を定量的に評価するには
Chapter4 Valuetrialsの概念
ほぼ同等:「まぁまぁこのくらいでいいんじゃない?」
Chapter5 Low-doseabiraterone
「投与法の工夫で高額薬も4分の1の量で十分な効果」
Chapter6 Low-doseabirateroneに賛否両論
「低用量」の研究を巡る大論争
Chapter7 Low-doseEGFR-TKI
「通常量」は治療に必要な量よりも高く設定されてしまっている可能性も
Chapter8 経口薬の問題点その1
経口分子標的薬とコカ・コーラの相互作用
Chapter9 経口薬の問題点その2
良好なadherenceに相関する唯一の因子は「臨床医とのコミュニケーション」
Chapter10 低用量治療の位置づけ
低用量治療研究はあくまでも「研究」である
Chapter11 低用量治療「研究」の目指すもの
「個々の患者に合わせて」のスローガンを「単なる念仏」にしないための検証
Chapter12 術後化学療法の治療期間総論
「術後治療」の欠点:張り合いがなく無駄が多い
Chapter13 術後化学療法の治療期間大腸癌
「5年生存率で0.4%の差」に意味はあるのか?
Chapter14 乳癌術後治療の投与期間
「やらなくてもいい治療をしないようにする」努力
Chapter15 非小細胞肺癌に対する術前術後治療
術前治療なら「効果」を判定できる、有効例には術後治療不要?
Chapter16 切除可能非小細胞肺癌に対する
“adjuvantvaluetrial”デザイン回帰不連続デザインはランダム化試験の代わりになるか
Chapter17 Realworldbenefitその1症例選択規準の緩和
オリンピック選手しか参加できない研究?
Chapter18 Realworldbenefitその2観察研究での外的妥当性検討
RCTのデータだけではまだ「仮承認」止まり?
Chapter19 分子標的薬の中止研究
「一生飲み続けねばならない」薬なのか?
Chapter20 免疫療法剤の中止研究
日本の臨床研究の真価が問われる
Chapter21 G-CSFのvaluetrials
誰のための骨髄抑制対策
Chapter22 バイオシミラー
やっぱり「大体同じ」でいいじゃない?
Chapter23 価格と効果の乖離その1
高い新薬には「それだけのこと」があるのか?
Chapter24 価格と効果の乖離その2
効果が高くても低くても値段は高い
Chapter25 価格と効果の乖離その3
モノに見合う適正な価格を目指して
Chapter26 外部からの規制によるコスト削減
「お上」の介入は是か非か
Chapter27 Desperationoncology
「失うものは何もない」と考えてしまうと
Chapter28 Desperationoncology対策その1
「希望」と「無益」の狭間で医者も患者も悩む
Chapter29 Desperationoncology対策その2
貧乏人のどケチ大作戦
Chapter30 費用対効果分析の問題点その1
「比較」だけでは全体像は見えない
Chapter31 費用対効果分析の問題点その2
みんな等しく同じ「1年」なのか
Chapter32 費用対効果分析の問題点その3
それでもやはり「進歩」は「進歩」ではないのか
Chapter33 なぜにコストのことを考えるのか
経済なき道徳は寝言である
監修の言葉:財政健全化から価値の創出へ