構造と機能がつながる神経解剖生理学**医学書院/坂井 建雄/978-4-260-04813-2/9784260048132**
発行 2024年10月
判型:A4判 280頁
ISBN 978-4-260-04813-2
編集:坂井 建雄 / 小林 靖 / 宇賀 貴紀
その形(構造)には理由(機能)がある。ありそうでなかった統合型テキスト
神経解剖学と神経生理学をセットで学ぶと、神経科学がわかる! 神経の構造(解剖学)と機能(生理学)を1項目見開き2ページで解説。解剖学、神経解剖学、神経生理学のスペシャリストによる解説が有機的に連携し、知識が重層的に統合されていくダイナミズムを体感できる。さらに、運動機能や高次脳機能の障害については、臨床のスペシャリストがそのメカニズムを解き明かす。学ぶ楽しさを実感できる1冊。
【目 次】
第1章 神経系の概観──マクロ解剖学
1.神経系の構成
1.神経系は,中枢神経系と末梢神経系からなる
2.末梢神経は,中枢神経からの情報を全身に伝える
2.脊髄神経
3.脊髄神経は脊柱管から椎間孔を通って出ていく
4.脊髄神経の前枝は身体の大部分に,後枝は背部のみに分布する
5.頸神経叢の枝は,頸部の皮膚・筋と横隔膜に分布する
6.腕神経叢の枝は上肢に分布する
7.腕神経叢の前方の枝は屈筋に,後方の枝は伸筋に分布する
8.腰神経叢の枝は,下腹部から大腿前面に分布する
9.仙骨神経叢の枝は,殿部~大腿後面と下腿~足に分布する
3.脳神経
10.脳神経は,支配領域の発生学的起源から3つに分けられる
11.嗅覚・視覚・聴覚は,特殊感覚である
12.眼球と舌を動かすのは,体性運動神経である
13.第1鰓弓から,三叉神経ができる
14.第2・3鰓弓から,顔面神経と舌咽神経ができる
15.第4~6鰓弓から,迷走神経と副神経ができる
4.自律神経
16.内臓と血管は交感神経と副交感神経により二重に支配される
17.交感神経は内臓・血管と体壁の両方を支配する
18.自律神経は伝達物質によって作用する
第2章 神経系の細胞生物学──ミクロ解剖学
1.神経系の細胞
1.神経系の細胞には,ニューロンと支持細胞がある
2.グリア細胞はニューロンの活動環境を整える
3.髄鞘が神経線維を取り巻く
2.細胞膜の興奮性
4.ニューロンは電気を帯びている
5.興奮は,Na+による活動電位によって運ばれる
3.興奮の伝達
6.シナプスでは,化学信号を伝える
7.シナプスの強さは,学習によって変わる
8.伝達物質は,受容体に働いてさまざまな反応を起こす
第3章 中枢神経
1.中枢神経の発生と区分
1.神経管から脳と脊髄が形成される
2.末梢神経は神経堤からも作られる
3.脳は,大脳・間脳・小脳・脳幹に分けられる
2.脊髄
4.脊髄は,脊柱管の中に位置する
5.脊髄の後根から感覚性入力,前根から運動性出力がある
6.脊髄には単純な反射回路や歩行プログラムがある
7.脊髄損傷の症状は損傷部位によって異なる
3.脳幹:延髄,橋,中脳
8.脳幹は中脳・橋・延髄からなる
9.脳幹の脳神経核は支配器官の性質によって分かれている
10.伝導路には上行性と下行性があり,その多くが脳幹か脊髄で対側に交叉する
11.脳幹は生命維持と脳活動レベルの調節に関与する
4.視床と視床上部
12.間脳は松果体,視床,視床下部などからなる
13.視床は大脳皮質へ入る情報の中継点である
14.視床が障害されると感覚障害や疼痛が生じる
5.視床下部と下垂体
15.視床下部には多数の小さな神経核があり,個体と種の維持に関わる多様な機能を営む
16.下垂体は前葉と後葉でホルモンの種類と分泌機構が異なる
17.視床下部ホルモンは内分泌系の最上位に位置する
18.下垂体前葉ホルモンは他の内分泌腺の機能を調節する
6.辺縁葉と辺縁系
19.嗅脳を含む辺縁葉は視床下部と深く関わる皮質である
20.海馬はエピソード記憶の形成に重要である
21.扁桃体は情動反応とその記憶に重要である
7.小脳
22.小脳には皮質と小脳核があり,機能的に3つに区分される
23.小脳皮質には精密な神経回路が存在する
24.小脳は脳幹の神経核や視床を介して他の領域に影響を及ぼす
8.大脳基底核
25.大脳の深部に大脳基底核がある
26.大脳皮質と大脳基底核のループは適切な運動の選択を行う
9.大脳の皮質と髄質
27.大脳の表面には新皮質が広がり,6つの葉に分かれる
28.大脳皮質の層構造は部位によって異なり,その領域の機能を反映する
29.大脳皮質の各領野は異なる機能を担う
30.連合野はさまざま情報を統合し,高次機能を営む
31.大脳髄質は3種類の線維で大脳皮質を各部につなぐ
10.頭蓋腔と脳
32.脳と脊髄は3重の髄膜で包まれる
33.髄液は中枢神経系を保護している
34.脳脊髄液の過剰や減少によって,脳の機能が障害される
35.脳の血液は内頸動脈と椎骨動脈によって供給される
36.頭蓋腔の容積と脳の血流量は一定に保たれている
37.脳の循環障害は,突然発症する
第4章 感覚機能
1.感覚機能の概観
1.頭部で特殊感覚を,全身の体壁で体性感覚を感知する
2.感覚は受容細胞で感知され,求心性神経を通って脊髄,脳幹に伝えられる
2.体性感覚
3.体性感覚は,皮膚と運動器の受容器によって生じる
4.体性感覚の受容器は,種類によって特性が異なる
5.体性感覚は,対側の大脳皮質の感覚野に伝えられる
3.視覚
6.眼球壁は3層構造であり,光は5つの透明構造物を通って網膜に達する
7.網膜には,2種類の視細胞と4種類の神経細胞が3層に配置されている
8.色と明暗を感知する2種類の視細胞の配置により,視覚の特性が決まる
9.眼球は水晶体の厚さを変えてピントを調節し,調節機能の障害などにより疾患を生じる
10.視覚情報は,視覚伝導路を経て大脳皮質の一次視覚野に伝えられる
11.大脳皮質の一次視覚野は,6層のカラム構造で情報処理を行う
12.視覚の情報処理は一次視覚野の単純型・複雑型細胞へと引き継がれる
4.聴覚と平衡感覚
13.耳は外耳,中耳,内耳から構成され,内耳では聴覚と平衡感覚を感知する
14.基底板の部位によって,音の高さが識別される
15.音波は,有毛細胞の感覚毛の揺れによって電気信号に変換される
16.有毛細胞からの信号は,大脳皮質の聴覚野に伝えられる
17.ヒトの聴力は,会話に使用する周波数で高い
18.前庭(耳石器)の平衡斑では直線加速度を,半規管では回転加速度を感知する
19.平衡感覚は,身体の姿勢と眼球の向きを制御する
5.嗅覚と味覚
20.嗅細胞は,感覚ニューロンでもある
21.味細胞は,5つの基本味を感知する
第5章 運動機能
1.運動機能の概観
1.脊髄前角にある運動ニューロンの神経終末が,骨格筋細胞とシナプスを形成する
2.身体部分の位置や力についての固有感覚は,姿勢・運動の制御に関わる
3.運動機能は,複数の中枢により階層的に制御される
2.下位脳による運動制御
4.脊髄は下位運動中枢で,脊髄反射の中枢である
5.姿勢や歩行運動は,下位運動中枢が制御する
6.よく見えるように眼球を動かすのは脳幹である
3.大脳皮質からの運動指令
7.大脳皮質からの運動指令は錐体路を通って脊髄に伝えられる
8.随意運動の指令は大脳皮質の一次運動野から送られる
9.環境と身体の感覚情報を用いて,適切な随意運動が実現される
10.小脳は,感覚情報と運動指令を統合し,的確な運動を実現する
11.大脳基底核は,必要な運動と不必要な運動を選別する
4.運動機能の障害
12.錐体路を損傷すると,随意運動ができなくなる
13.小脳の損傷によって運動失調が起こる
14.大脳基底核の損傷によって不随意運動や筋緊張の異常が起こる
15.神経可塑性によって運動麻痺を回復することができる
第6章 生命維持に関わる中枢機能
1.生命の維持と意識水準
1.視床下部による内臓機能の調節は生命維持に不可欠である
2.睡眠と覚醒の切り替えには脳幹と視床下部が関与する
2.本能と意欲
3.視床下部は自律神経と本能行動の中枢である
4.辺縁系は感情と情動の中枢だけではない
5.報酬系は行動の結果を判定し,ドパミン神経は,報酬予測誤差情報を伝える
第7章 脳の高次機能
1.認知機能
1.視覚情報は,背側と腹側の連合野に至る
2.概日リズムは視床下部で作られ,時間の感覚は大脳皮質・小脳・大脳基底核で形成される
3.意思決定とは,複数の選択肢を1つに絞るプロセスである
4.前頭前野は,柔軟な判断に必要である
2.言語機能
5.左脳のウェルニッケ野の損傷により,感覚性失語が起こる
6.左脳のブローカ野の損傷により,運動性失語が起こる
3.学習と記憶
7.意識にのぼる長期記憶には,エピソード記憶と意味記憶がある
8.海馬は,陳述記憶の形成に不可欠である
9.手続き記憶には,大脳基底核と小脳のループ構造が関わる
4.中枢機能の差異
10.性ホルモンは脳を分化させ,固有の性行動を引き起こす
第8章 脳の高次機能障害
1.高次脳機能障害は,脳の損傷によって生じる認知障害である
2.認知症では最近の記憶が障害される
3.統合失調症では,対人・自我機能と認知と意欲に症状が現れる
4.双極症とうつ病は,気分の障害である
5.自閉スペクトラム症には,独特の認知特性がある
6.依存性の薬物は,脳の報酬回路を駆動する
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