糖尿病のある人の診かた**中外医学社/寺内 康夫/978-4-498-22306-6/9784498223066**

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3,960円(税込み)
person with diabetes
編著
寺内 康夫(横浜市立大学大学院 医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学教室 教授)
出版社
中外医学社
分野
糖尿病

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特集
新刊
書籍版 販売期間
2025/03/25~
JANコード
9784498223066
商品コード
9784498223066
発行 2025年3月
判型:A5判 208頁
ISBN 978-4-498-22306-6

言葉遊びではなく……「患者」を意識から外すことで見えてくる臨床風景

本書は,「糖尿病“患者”」という言葉を出来るだけ使わずにつくられています.糖尿病のある人(person with diabetes:PwD)の寿命が伸びてきている昨今,糖尿病との因果が確定している疾患:合併症(神経障害・網膜症・腎症,冠動脈疾患・脳血管障害・末梢神経障害など)の診療はもちろん重要です.一方で,糖尿病に起因しない(もしくは関与が少ない)加齢や環境要因によって生じる疾患:併存症・併存疾患について,糖尿病の延長線上で考えてはいないでしょうか.そのような考えでは,「糖尿病治療に際して真面目に取り組んでこなかったから合併症・併存症が起きた」という呪いの言葉が容易に生まれます.「患者」という言葉を捨て去ることで,それを当然とする世界から脱却できるかもしれません.PwDが糖尿病のない人と変わらない寿命とQOLを目指すために,エキスパートが何をどう実践しているか,ぜひご覧ください.

【目 次】
企画趣旨~糖尿病のある人(person with diabetes:PwD)の診かた~
   
CHAPTER 0 糖尿病をもつ人の治療目標・目的としてのQOL
   1 糖尿病をもつ人(person with diabetes)という呼び方がもたらす大きな意識改革   
   2 日本の医者の態度はどうだったのか,どう変わろうとしているのか ─革新性の理解のために
   3 糖尿病をもつ人という立場から見た糖尿病治療の目標と目的 
   4 HRQOL(health related quality of life)とは具体的にどんな機能や状態を言うのか 
     1)医学的な概念としてのQOLが含む事象 
     2)QOL質問紙の種類 
     3)QOL測定(PROを含む)はなぜ重要なのか─HbA1c以外の何を伝えるか 
   5 糖尿病をもつ人の寿命とQOL ─糖尿病と治療の重要なアウトカム指標のエビデンス
     1)寿命(生存年数) 
     2)QOL─それぞれの治療段階のアウトカム指標としてのQOL 
      2-1 日々の治療のアウトカム(第1段階)としてのQOL 
      2-2 中期的目標(第2段階):合併症がQOLに与える影響 
      2-3 長期的目標(第3段階):糖尿病のない人と変わらない寿命とQOL 
     3)QOLの全体像─QOLはアウトカムであると同時に予測因子である 
   6 医療者とPwDとの関係によってQOLが向上する ─ person centered care(collaborative care)につながる要因(PROも含めて)
     1)「エンパワーメント」や「健康リテラシー」とQOL 
     2)治療への自信(self efficacy)とQOL ─自信を育てるような関わり方が重要である   
     3)医療者によるスティグマとQOL 
     4)医療者との関係─治療法について十分議論できているか(コミュニケーション)とQOL 
     5)まとめ─「糖尿病をもたない人と変わらないQOL」の維持は実現可能である 
   7 医師(医療者)の言葉と態度と共感 
     1)病をもつ人と関わっていくときの姿勢,態度,考え方:患者-医師関係(The Patient Physician Relationship)  
     2)言葉の重さ 
   8 合併症や併存症がある方にとっても(糖尿病をもつすべての人の)QOLが高くなるようなケアをしよう 
     1)合併症をもつ人への治療,身体障害をもつ人へのケア 
   9 まとめ 糖尿病医療学─糖尿病をもつすべての人へのケアとQOL
   
CHAPTER 1 糖尿病合併症・併存症を見つける
 section 1 糖尿病のある人についての初期の初期
   1 糖尿病と診断されて間もない患者を受け持ったら 
     1)糖尿病のさまざまなステージ 
     2)“糖尿病”の受け止めについて 
   2 診察のポイント 
   3 糖尿病合併症(細小血管症,大血管症)をどう説明するか 
     1)急性合併症について 
     2)慢性合併症について 
   4 糖尿病の併存症をどうやって説明するか 
   5 糖尿病の初期の治療戦略 
 section 2 糖尿病合併症の予兆・発症を見つけ出す
   1 肝障害について 
   2 腎障害について 
   3 脂質異常症について 
   4 症例提示 
 section 3 糖尿病併存症の予兆・発症を見つけ出す
   1 症状別の想起・予防すべき併存症 
   2 その他,意識しておくべき疾患 
   
CHAPTER 2 糖尿病合併症・併存症をコントロールする(糖尿病からの視点)
 section 1 HbA1c高値が続くときの糖尿病診療
   1 血糖値が高い状態が続くのは,療養行動を「しない/できない」からではなく,「しない/できない理由,事情がある」からである 
   2 血糖高値の真の理由に迫りながら,患者さんとともに治療を進めるために ─糖尿病治療の2つのアプローチ,相互参加モデルとその盲点,困難さ
   3 患者中心アプローチの実践 ─病棟での心理カンファレンス開催とそこから得られた学び
   4 実際の症例へのかかわり─行き詰まったときの入院のススメ 
   5 Aさんと私たちの2週間を振り返る─行動変化ステージモデルの観点から 
   6 最後に 血糖値が高いままでも「患者中心」をあきらめない
 section 2 合併症・併存症の新規発症に注意
   1 糖尿病と診断されたとき 
   2 合併症・併存症の早期発見のために 
   3 医療を行う場を作ること 
   4 チーム医療の役割 
   5 合併症・併存症の新規発症のそのあとに 
   
CHAPTER 3 糖尿病合併症・併存症をコントロールする(合併症・併存症からの視点)
 section 1 疾患別対応
   1 症例提示:腎機能障害をきたした肥満2型糖尿病男性 
   2 ギャップの理由?その1:バーチャルな病気 
   3 ギャップの理由?その2:現在バイアス 
   4 ギャップの理由?その3:つなぎの欠如 
   5 合併症・併存症の診かた?その1:PwDと医療者のギャップ 
   6 合併症・併存症の診かた?その2:関係性を保つ ─そこに糖尿病医療学が必要
   7 合併症・併存症の診かた?その3:糖尿病連携手帳の活用 
     1)糖尿病連携手帳について 
     2)糖尿病連携手帳のちから 
     3)便潜血のすすめ 
   8 合併症・併存症の診かた?その4:チャート式糖尿病人生航路 ─「ゆるやかな法則からwell-beingへ」
 section 2 マルチモビディティについての考え方
   1 マルチモビディティとは? 
   2 糖尿病におけるマルチモビディティ 
   3 糖尿病診療でよく見られるマルチモビディティのパターン 
   4 マルチモビディティのエッセンス,診療のこつ 
   
CHAPTER 4 糖尿病合併症・併存症と付き合う
 section 1 総論
   1 これから起きる可能性のある合併症・併存症について 
   2 悪化してしまった状態を最初からPwDに意識させる必要性はあるのか? 
 section 2 各論?COVID-19を罹患した糖尿病のある人
   1 COVID-19クラスター感染により災害医療を行わなければならない状況となる 
   2 COVID-19肺炎罹患時の糖尿病治療の困難さ 
   3 COVID-19肺炎罹患時の糖尿病治療の提案 
     1)目標血糖値について 
     2)COVID-19肺炎罹患時に推奨される糖尿病治療:インスリン療法 
   4 COVID-19肺炎に罹患する前の糖尿病治療 
     1)COVID-19肺炎は糖尿病のある人において重症化しやすい 
     2)COVID-19パンデミック下での糖尿病治療 
   5 糖尿病だったからCOVID-19が重症化したのだろうか 
 section 3 各論?悪性腫瘍ターミナル期の糖尿病をもつ人
   1 病をもつ人への医療者の態度 
   2 悪性腫瘍と糖尿病をもつこと 
   3 悪性腫瘍と血糖マネジメント 
   4 悪性腫瘍ターミナル期のスピリチュアル・ケアとしての血糖マネジメント 
   5 糖尿病だったから悪性腫瘍が治らずターミナル期となったのだろうか? 
   6 ターミナル期を診る糖尿病医療者の存在意味 
 section 4 各論?認知障害が進行した糖尿病のある人
   1 認知症とは 
   2 進行した認知症の問題点 
   3 糖尿病と認知機能障害 
   4 認知機能が低下した高齢者の治療目標 
   5 認知機能障害が進行した糖尿病のある人へのかかわりと支援 
   
CHAPTER 5 糖尿病のある人に対するコーチング
   1 コーチングとは 
   2 コーチングの構造と基本スキル 
   3 コーチングサイクル 
   4 スキルを支えるコーチングマインド 
   5 コーチングの限界と糖尿病医療 
   
CHAPTER 6 私はこう考える
 section 1 糖尿病センターの掟
   1 病態の評価表 
   2 退院時の色紙 
 section 2 糖尿病のある人と向き合う医療者に求められること
   1 自己中断のリスクがある糖尿病のある人へのかかわり 
   2 感情負担(スティグマに伴う)が強い糖尿病のある人へのかかわり 
   3 糖尿病のある人と向き合う医療者に求められるもの 
 section 3 患者さんの人生を支えるということ
   ●緒言 患者さんが医療に求めるもの 
   1 生きる意欲のない患者さんとの出会い 
   2 実践しようとしていること 
     1)Listen to the patient  
     2)語りの前提となる信頼関係を築く 
     3)聴くこと 
     4)共感(言葉や行動をジャッジしない) 
     5)自分の心と違ってはいけない 
     6)適切な返し 
     7)Informed choice
     8)患者さんの人生は患者さんのもの 
     9)信じて待つ 
     10)患者さんをトータルに診る 
   ●おわりに 施設全体で患者さんを支える姿勢 
 section 4 病院のなかの,糖尿病のある人とのお話の場である談話室(以前は診療室と呼んでいました)
 section 5 初診時の診察(熊倉医院の場合)
   共感力?  
   歴史・背景を知る(あなたはどういう人なのか知りたい),聴くこと,物語の準備  
   糖尿病についての情報を提供する(あなたは糖尿病についてどれだけ知っているのか知りたい)  
   今後の治療方針について相談する(待つこと)  
   定期受診の際に聴くこと  
   スタッフに感謝する  
   患者さんのことば  
  ●さいごに─診療は愛だ!