認知コミュニケーション障害の理解と評価・訓練**協同医書出版社/中村 光/978-4-7639-3062-0/9784763930620**
右半球損傷/前頭葉損傷/外傷性脳損傷/小脳性認知情動症候群
発行 2025年7月
判型:B5判 264頁
ISBN 978-4-7639-3062-0
編著:中村 光
著:飯干 紀代子 / 植谷 利英 / 浦野 雅世 / 小川 一美 / 塚越 千尋 / 津田 哲也 / 時本 真吾 / 時本 楠緒子 / 藤本 憲正 / 船山 道隆 / 本多 留美 / 宮﨑 彰子 / 宮﨑 泰広 / 吉田 敬 / 吉村 貴子
本邦初!患者の理解や訓練に困っている臨床家のための、認知コミュニケーション障害の実践書。
認知コミュニケーション障害とは、「後天性脳損傷に伴う、認知機能障害が背景にあると考えられる、非失語性のコミュニケーション障害の総称」(本文より)です。脳血管疾患や脳腫瘍などの局所性の脳損傷、外傷性脳損傷や低酸素脳症、脳炎などのびまん性の脳損傷のどちらでも出現します。
本書は、病態や原因疾患、評価と訓練の方法について包括的に解説する初めての書籍です。
臨床では、「失語はないが(または軽いが)コミュニケーションに顕著な問題がある人」を多く経験し、戸惑います。「どのような理論的枠組みで捉え理解したらよいのか」「どのような方法でその問題を定量的に評価したらよいのか」「どのように介入したらその問題を少しでも軽減することができるのか」...
概念・評価に加え、注意・記憶・遂行機能に焦点を当てた訓練、コミュニケーション障害への直接的な訓練法も紹介。わが国で初めて技法を体系的に解説し、実用的かつ学術的でやさしく、分かりやすく読める1冊になっています。
この障害は右半球損傷の約半数、外傷性脳損傷の大多数に認められるという報告もあります。
注意・記憶・遂行機能障害などにより、情報に気づきにくい、経験に照合できない、統合できないために思いを伝えられない、相手の意図を推論できないなど、社会的なコミュニケーション障害が特徴です。日常生活に大きな影響を及ぼすため、言語聴覚士が中心になって関わるべき問題です。
また、認知コミュニケーション障害の概念の誕生背景には、認知機能に対する理解の進歩があり、高次脳機能障害患者に関わるすべての医師、リハビリ専門職、研究者にとっても必読の内容です。
脳損傷後の患者さんのコミュニケーションの問題を少しでも改善するために知識や技術をアップデートし、専門性を発揮しましょう。
【目 次】
第Ⅰ部 コミュニケーションとその障害
第1章 認知コミュニケーション障害の概要
1.はじめに:認知コミュニケーション障害とは
2.定義
3.区別すべき障害
1)先天性・発達性の障害
2)機能性の疾患
3)失語症
4)認知症
5)コミュニケーションスタイルにおける個人差
4.症状と原因疾患など
1)主な症状
2)病識またはメタ認知の障害
3)原因疾患と類型
4)有症率
5.障害のメカニズム
1)認知機能とコミュニケーション:総論
2)認知機能とコミュニケーション:各論
6.日常生活への影響
7.まとめ
第2章 コミュニケーションと脳損傷
1.はじめに
2.コミュニケーションとは
1)意味の共有
2)コミュニケーションのチャネル
3.コミュニケーションのプロセスモデル
1)概要
2)コンテキスト
4.語用論とGrice の理論
1)語用論
2)Grice の理論
5.まとめ
コラム:対人コミュニケーション
第Ⅱ部 認知コミュニケーション障害と疾患
第3章 認知コミュニケーション障害を伴う症候群
1.はじめに
2.語用論的な要因と高次脳機能障害の関係
1)語用論的な理解
2)語用論的な発話(語の運用能力)
3)プロソディ
4)注意機能・ワーキングメモリ・情報処理速度
5)記憶機能
3.症候群別の認知コミュニケーション障害の特徴
1)右半球損傷
2)前頭葉損傷
3)外傷性脳損傷・びまん性軸索損傷
4)小脳性認知情動症候群
5)脳炎
6)低酸素脳症
7)認知症
4.最後に
第4章 認知コミュニケーション障害の原因疾患
1.認知コミュニケーション障害の原因疾患
1)概要
2)後天性脳損傷の疾患の特徴
3)損傷や回復の程度を修飾する因子
2.個別の疾患
1)脳血管障害(脳卒中)
2)外傷性脳損傷
3)脳腫瘍
4)脳炎
5)低酸素脳症
3.脳損傷部位と認知機能障害の関係
4.神経変性疾患
1)概要
2)神経変性疾患の症状
5.まとめ
コラム:言語の語用論
第Ⅲ部 認知コミュニケーション障害の評価
第5章 検査式評価法
1.はじめに
2.欧米の検査式評価法
1)感情表現
2)比喩・ことわざ・慣用句
3)皮肉
4)間違い・嘘
5)ユーモア
6)推論
3.日本における検査方法の提案
1)感情表現
2)比喩と皮肉
3)ユーモア
4)推論
4.評価の実例
5.まとめ
第6章 観察式評価法
1.はじめに
1)評価を行う際の基本的な注意①
2)評価を行う際の基本的な注意②
3)結束性と一貫性
2.欧米における評価尺度
1)ラ・トローブコミュニケーション質問票(LCQ)
2)セントアンドリュース・スウォンジー神経行動評価尺度(SASNOS)
3)語用論的プロトコール
4)その他の評価尺度
3.日本語版がある評価尺度
1)Pragmatic Rating Scale(日本語版PRS)
2)後天性脳損傷のための認知コミュニケーションチェックリスト(CCCABI日本語版)
4.評価の実例
5.病識またはメタ認知の評価
1)評価の方法論
2)評価における注意点
3)主な評価尺度
6.まとめ
第7章 会話分析
1.会話分析とは
1)会話分析の問題意識
2)修復
2.会話分析の観点に基づく評価法
1)会話分析の応用
2)臨床場面における会話分析の意義
3)CAPPCI
3.分析例
1)職員による質問
2)認知症がある人の反応
3)職員の反応
4.まとめ
第Ⅳ部 認知コミュニケーション障害の訓練
第8章 治療的介入1:認知機能障害の訓練
1.はじめに-コミュニケーションと認知機能との関係-
2.認知コミュニケーション障害の背景にある認知機能障害と訓練法、コミュニケーション活動に与える効果
3.注意障害
1)注意障害とコミュニケーション障害
2)注意障害の訓練
3)注意障害に対する訓練がコミュニケーション活動に与える効果
4.記憶障害
1)記憶障害とコミュニケーション障害
2)記憶障害の訓練
3)記憶障害に対する訓練がコミュニケーション活動に与える効果
5.遂行機能障害
1)遂行機能障害とコミュニケーション障害
2)遂行機能障害の訓練
3)遂行機能障害に対する訓練がコミュニケーション活動に与える効果
6.注意障害、記憶障害、遂行機能障害による言語様式ごとのコミュニケーション障害特性
7.まとめ-認知コミュニケーション障害における注意、記憶、遂行機能へのアプローチと有効なコミュニケーション活動に向けて-
第9章 治療的介入2:コミュニケーション障害の訓練
1.訓練法総論
1)メタ認知
2)訓練における共通技法
2.訓練法各論
1)言語表出の訓練
2)言語理解の訓練
3)プロソディの訓練
4)社会的コミュニケーションの訓練
3.メタ認知(病識)の訓練
4.まとめ
第10章 環境的介入:活動制限・参加制約へのアプローチ
1.認知コミュニケーション障害による活動制限・参加制約とは
1)ICF による活動制限・参加制約
2)認知コミュニケーション障害による活動制限・参加制約
3)認知コミュニケーション障害が就労に及ぼす影響
2.環境的介入とは
1)環境的介入の種類
2)認知コミュニケーション障害に対する環境的介入
3.人的環境への介入の実際
1)リハビリテーションに関わるスタッフに望まれる言動・態度
2)周囲の人々への介入例
3)家族などの身近な人たちへの介入
4.就労支援における環境的介入
1)就労支援における環境的介入の実際
2)メタ認知を促す環境-より効果のある環境的介入のために-
5.まとめ
第11章 事例
事例1:右半球損傷の事例
事例2:前頭葉損傷の事例
事例3:びまん性脳損傷(外傷性脳損傷)の事例
事例4:小脳性認知情動症候群の事例
第Ⅴ部 認知症のコミュニケーション障害
第12章 認知症のコミュニケーション障害の評価と支援
1.認知症の定義と分類
2.コミュニケーション症状
1)アルツハイマー型認知症(AD)
2)前頭側頭型認知症(FTD)
3)原発性進行性失語
3.評価
1)考え方の基本
2)具体的な評価方法
4.支援
1)考え方の基本
2)本人に対する支援
3)環境調整
4)家族への支援
5.まとめ
資料編 訓練に利用できる教材と使用法