NIPT時代における 実践的 妊娠初期胎児超音波検査**メジカルビュー社/中村 靖/978-4-7583-2351-2/9784758323512**
発行 2025年7月
判型:B5判 160頁
ISBN 978-4-7583-2351-2
NIPTだけでは届かない領域がある。妊娠初期超音波と併せてこそ,診断の確度が高まる
妊娠初期の胎児の観察は,NIPTの時代に入って,NT計測を主体とするスクリーニング目的の検査から,より詳しく胎児の構造を観察して,重大な異常をより早期に発見する検査へと変貌しつつある。わが国ではあまり馴染みのない形態異常をみる妊娠初期胎児超音波検査は,多くの国々で実施されており,かつて妊娠中期に確認された胎児形態異常を妊娠11?14週の初期に見て診断に役立てている。本書は,長年,出生前診断にフォーカスを当てて診療してきた著者が,これから妊娠初期胎児超音波検査を実践しようという医療者に有用な一冊となることを願い,その知見と術を惜しみなく伝授した「実践の書」である。
【目 次】
Ⅰ 総 論
第1章「NIPT時代の胎児超音波検査」とは
「NIPT時代」とは何か?
・NIPTとは?
・「スクリーニング検査」という認識
・「胎児の遺伝学的検査」
・「採血のみで高い陽性的中率」をもつ検査の普及
・わが国における検査実施までの経緯
・『情報を積極的に知らせる必要はない』通知,思惑を外れた普及
・「NIPT時代」 ~動き出したわが国のNIPTと課題~
NIPT導入,実用化のインパクト
・NIPT導入による他検査への影響
・NIPT時代におけるNT計測の意義
NIPTで何がわかるのか?
・胎児のDNA検査
・X,Y染色体の数的異常の検出
・染色体微細欠失の検出,その他
超音波所見でチェックしているものは何?
・胎児超音波検査でみているもの
・妊娠初期超音波とNT
・「NT肥厚」というマーカー
・NT計測不要論?
・“early scan” という試み ~NIPT時代の胎児超音波検査~
第2章 なぜ「妊娠初期胎児超音波検査」が重要なのか
「この胎児にNIPTを行う適応がありますか?」
・「妊娠初期超音波検査」事情,日本の場合
・産婦人科医がNIPTを行うべきとする理由
・1. 無頭蓋症(acrania)
・2. Body stalk anomaly
・3.全前脳胞症(holoprosencephaly)
胎児の形態・構造異常はなぜ起こるか~妊娠初期胎児超音波検査の役割・意義~
・解剖学と発生学
・遺伝的問題
・二次的な問題
・異常所見発見後の検査と治療の可能性
遺伝的問題の治療における妊娠初期胎児超音波検査
二次的問題の治療と妊娠初期胎児超音波検査
胎児異常を早期発見することをためらう心理とその対応
・わが国の人工妊娠中絶に関する土壌
・産婦人科医師の慎重さについて
・丁寧な診療と的確な説明が妊婦の主体的な意思決定につながる
第3章 妊娠初期胎児超音波検査のための装置の使い方
いつ,どのような方法で検査を行うのか
見たいポイントをよりよく見えるようにする
・妊娠初期と妊娠中期以降での見え方の違い
・妊娠初期の検査のアドバンテージと留意点
装置の性能を最大限活用する
・検査に適したプローブを選択する
・見るべき対象を真ん中に配置し,十分に拡大する
・見たい位置に焦点を合わせる
・可能な限り,障害物を避ける
Ⅱ 実践編
第4章 妊娠初期胎児超音波検査の実際
妊娠初期に見るべきものとその意味
・「見ているものは何なのか」
・妊娠中期の胎児との違い
どのように胎児を見ていくか :合理的な検査の組み立て
・見やすい部位をどこからでも
・検査と断面
・胎児の一瞬を記憶に留める
・3D/4D超音波検査
・
第5章 胃がある側が左なのか,左側に胃ができたのか?~体の左右軸の決定とその異常~
どちらが右で,どちらが左?
・経腹超音波と経腟超音波
・母体中心の見方,胎児中心の見方
・左右軸と異常の見方
左右軸に関連する疾患:内臓錯位・逆位
・左側相同と右側相同
先天性心疾患の特徴
下大静脈の確認
・内臓錯位・逆位はなぜ生じる?
原発性線毛運動不全症(PCD)
左右非対称性が生じる過程
・左右軸以外の問題との鑑別
第6章 その厚みに何を見るのか。今後も見続けるのか。~Nuchal translucency(NT)~
NT計測とは何か
・NT肥厚マーカーの発見と検査の変遷
・NTの“正体”
・必ずしも「NT=むくみ」ではない
NTをきちんと計測できていますか?
・NT計測の時期や適切さ
・FMFが提唱するNT計測方法
・memo The Fetal Medicine Foundation(FMF)
NIPT時代におけるNT計測の意義とは
・陽性的中率の格段の違い
・染色体以外の問題もすくい上げるマーカー
・0.1mm単位の計測はコンバインド検査のため
・NIPT時代のNT,「厚いか,厚くないか」
そもそもNT肥厚とは何なのか
・「嚢胞」と「むくみ」
・計測のためのNT,病態のヒントとしてのNT
第7章 発達のごく初期段階。だが,すでに問題は生じている。~頭部と中枢神経系~
妊娠初期胎児の頭部を見る4つのポイント
1.横断像での頭部形態と頭蓋内構造
・21番染色体トリソミー(21トリソミー)
・18番染色体トリソミー(18トリソミー)
・13番染色体トリソミー(13トリソミー)
2.矢状断での顔面の形態
・鼻骨欠損
・小顎症
・口唇口蓋裂
・frontomaxillary facial angle(FMF angle)
3.矢状断での頭蓋内および頭部の構造
・後頭蓋窩の三段構造と二分脊椎
・脳幹部所見と二分脊椎
4.冠状断での顔面の観察
第8章 体のどこよりも早くから大事な役割を担っている。~心臓と静脈管~
心臓の検査
・妊娠初期胎児超音波検査の大事な項目
・心臓では何を確認すべきか
・4CVと3 VTV
・心臓の動きに適した設定
静脈管
・additional markerとしての静脈管
・静脈管欠損と異常
・静脈管欠損と染色体異常
第9章 妊娠初期だからこそ直感的にわかる形態異常~体表と四肢,その他~
体 表
・発生学から考える体表の異常
・臍帯ヘルニア
・Body stalk anormaly
・生理的臍帯ヘルニアの残存
四 肢
・週数から考える骨系統疾患の特徴
・骨系統疾患とNT肥厚
・妊娠初期に見られる手指の形態異常
・妊娠初期に見られる下肢の形態異常
・足関節の形態異常と先天異常
その他
・「胎児無動」とNT肥厚
・原因遺伝子特定の重要性
第10章 胎児検査の両輪。画像診断と遺伝学的検査~胎児の問題に関する総合的判断~
それはマーカー陽性所見なのか,異常所見・症状なのか
・曖昧さについての理解と冷静な判断
・「確定的検査」と「非確定的検査」
NIPT陽性のとき,羊水検査が必須なのか
・モザイクの場合,絨毛検査では判断できない
・NIPT+超音波検査を組み合わせた判断の効果
・18トリソミー
・13トリソミー
・21トリソミー
NIPT陰性だがNT肥厚を認めたとき,どう検査を進めていけば良いのか
・NT肥厚を“normal variant”と判じる難しさ
・Ⅹモノソミー(Turner症候群)
・NT肥厚と心構築異常
・NT肥厚と骨系統疾患
・「NIPT陰性, NT肥厚,超音波所見なし」
RASopathyをどう扱うべきか
・シグナル伝達経路異常疾患群
・NT肥厚とRASopathy
・私たち医療者のサポートとは
・column 遺伝カウンセリングの重要性に関連して~遺伝学の知識と遺伝学的検査へのアクセスの問題~
たかがNT,されどNT そしてより洗練された出生前検査・診断へ
・計測値としての評価の先へ
・画像診断技術と遺伝学的診断技術と
補 遺 侵襲的検査の実際
1.準 備
・妊婦側のコンディション
・抗凝固薬服用
・発熱・炎症,血腫,筋腫
・実施時期,検査器具
2.羊水穿刺 amniocentesisの手順
・穿刺前の準備
・穿刺の実際
・穿刺後の注意
3.絨毛採取chorionic villus samplingの手順
・経腹法
・採取前の準備
・絨毛採取の実際
・採取後
検査に伴う流産リスク
・データのアップデート
・求められる検査技術習得の機会の整備