失行の診かた**医学書院/近藤 正樹/978-4-260-06272-5/9784260062725**
発行 2025年10月
判型:A5判 200頁
ISBN 978-4-260-06272-5
シリーズ編集:河村 満
著:近藤 正樹
「動きとは何か」から始める、これまでにない失行の入門書!
高次脳機能障害のなかでも、最も難解な概念の1つ──「失行」。この複雑なテーマをエキスパートがトコトンわかりやすく解き明かす。「なぜ失行は理解しにくいのか?」。その問いに向き合い、まずは前提となる「動き」のしくみから丁寧に解説。そして失行を「発見」したLiepmannを軸に、彼以前以後まで広く歴史の流れを俯瞰し、点の知識ではなく、立体的な全体像として失行を捉えます。カラーイラストも豊富に収載。
【目 次】
第1章 どうして,失行は難しいのか──「動き」と「道具」を手がかりに
イントロダクション
なぜ「動き」と「道具」が重要なのか?
■ 失行の定義は難しい
■ とっかかりとしての「動き」と「道具」
「動き」の話
■ 「動き」とは何か
■ 「動き」はどのように調節されるのか
■ 「動き」はイメージからつくり出される
■ 「動き」のしくみ
・ 運動を支配しているのはどこか?
・ 運動の指令はどこを通って伝わるのか?
■ 「動き」の障害メカニズム
■ 「動き」を表現する言葉
・ 運動,動作,行為・行動
・ 運動,動作,行為,行動が名前に入った症候
・ ジェスチャーとパントマイム
「道具」の話
■ 道具とは何か
■ 道具を使うための2つの機能
■ 人類の進化,発達からみる道具使用
■ 道具はどのようにしてつくられ,使われるようになったのか
■ ヒトの発達過程と道具使用
確認のためのQ&A
第2章 失行の「始まり」から「現在地」まで──失行の本質を理解する
イントロダクション
本章のあらすじ
Liepmann以前の「失行」
■ 動作はどのようにつくり出されるのか
■ 動作がうまくできなくなるのはなぜか
・ ①精神麻痺(Seelenlähmung 独, mind palsy 英)
・ ②失象徴(Asymbolie 独, asymbolia 英)
■ Liepmann登場
Liepmannの失行理論/失行モデル
■ Liepmannの一例報告
・ ①予測された温存領域
・ ②予測された損傷部位
・ ③病理所見
■ Liepmannの失行理論の特徴
・ ①除外的な定義
・ ②左大脳半球に優位性がある
・ ③左側失行における脳梁損傷の役割
・ ④左頭頂葉の重要性
・ ⑤失行を3つに分類
■ Liepmannの失行モデルと分類
■ 動作を生み出す過程のモデル
■ 3つの失行分類の病変部位のモデル
Liepmannとは異なる失行理論
■ 失行中枢(Kleist)
■ 全体論からみた失行の理解(Marrie)
■ 大脳生理学からみた失行の解釈(Jackson, von Monakow, Brun)
Liepmannの失行理論から現在の失行理論へ
■ 構成失行,着衣失行の独立
■ 観念性失行の解釈の変遷
■ Liepmannの失行モデルの改訂
・ ①行為産生過程モデル
・ ②行為概念系・行為産生系のモデル
・ ③道具使用のモデル
確認のためのQ&A
章末付録 もう少し掘り下げたい人のための失行研究史
Pick(1851~1924)/道具使用の障害
Grünbaum(1885~1932)/失行失認
Morlaas(1895~1981)/使用の失認
Denny-Brown(1901~1981)/磁性失行と反発性失行
De Renzi(1924~2014)/使用の健忘
Geschwind(1926~1984)/離断症候群と失行
Signoret(1933~1991)/身振り素,運動素
Goldenberg(1949~)/失行の症候病巣関連研究
Osiurak(1981~)/道具使用モデル
第3章 失行の原因──病変部位と関連疾患を理解する
イントロダクション
失行に関係する病巣
■ 第2章のおさらい
■ 失行症状と脳病巣──Liepmann以後の報告から
・ 肢節運動失行と中心前回・中心後回
・ 観念性失行と左頭頂葉
失行をきたす疾患
■ 脳梗塞で起こる失行と神経変性疾患で起こる失行の違い
・ ①病巣の広がりの違い
・ ②症候の複雑性の違い
■ 脳梗塞
■ 神経変性疾患
・ 大脳皮質基底核変性症(CBD)
・ アルツハイマー病(Alzheimer disease:AD)
・ ピック病〔前頭側頭葉変性症(FTLD)〕
・ 原発性進行性失行症(primary progressive apraxia)
■ 局所損傷を伴う疾患
・ 脳出血
・ 脳腫瘍
・ 感染性・自己免疫性の炎症性疾患
確認のためのQ&A
第4章 失行の評価と支援──診察・検査法と介入を理解する
失行の評価
■ 神経学的診察
・ ①運動麻痺
・ ②筋緊張異常,不随意運動
・ ③運動失調
・ ④感覚障害
・ ⑤理解障害
・ ⑥視覚性失認と意味記憶障害
■ 失行のための診察
■ 失行のための診察に用いる検査バッテリー
・ ①WAB失語症検査,下位項目(行為)
・ ②標準高次動作性検査(Standard Performance Test for Apraxia:SPTA)
■ どのように誤るのか(誤反応分析)
■ 評価の後に失行の特徴を考える
・ ①観念性失行
・ ②肢節運動失行
・ ③観念運動性失行
・ ④その他の“失行”
失行評価の実際の流れ
・ ①初回面接
・ ②スクリーニング
・ ③総合的検査
・ ④検査結果をリハビリテーションに活かす
・ ⑤実生活での能力評価
失行のリハビリテーション
■ 失行にはどのようなリハビリテーションを行ったらよいのか
・ コクランデータベースにおける介入方法
・ Heilmanグループのテキストブックでのリハビリテーション
・ リハビリテーション私論
■ 失行症例のリハビリテーションの複雑さ
■ 今後の展開
確認のためのQ&A
第5章 失行の教室──症例から失行を理解する
イントロダクション
Lesson1 「左頭頂葉病変の失行」を学ぶ
幕間小話 頭頂葉はスクランブル?
Lesson2 「失語と失行」を学ぶ
幕間小話 左利きの失行
Lesson3 「脳梁病変の失行」を学ぶ
幕間小話 脳梁の毀誉褒貶
Lesson4 「CBDの失行」を学ぶ
幕間小話 原著にみられるCBDの特異な症状
Lesson5 「意味記憶障害と失行」を学ぶ
幕間小話 認知症患者とその家族
column
固有感覚と固有感覚受容器
他人の手徴候
動きに関係した英語表現
「木器時代」はなぜないのか
失行研究黎明期の時代背景:局在論(連合主義)vs.全体論
Hugo Karl Liepmann
記憶の痕跡(engram)
プラキシコン(praxicon)
秋元波留夫先生(1906~2007)の功績
「失行」という訳語はいつから使われているのか
日本国内の失行研究の動向
感覚鈍麻と失行の関係
脳梁と拮抗性失行
大脳皮質基底核症候群(CBS)
パーキンソン病と失行
ミラーニューロンと模倣
WAB失語症検査日本語版
身体物品化現象(body part as object:BPO)
新しい機器をどう考える?
あとがき