健康格差社会 第2版**医学書院/近藤 克則/9784260049689**
発行 2022年6月
判型:A5 264頁
ISBN 978-4-260-04968-9
「健康格差」を学びたい人に最適な定番書、最新の知見を加えた待望の第2版!
日本が「健康格差社会」であることを世に示した初版の発行後、社会疫学研究の進展により健康格差の存在は共通認識となり、健康格差の縮小が国の政策目標に掲げられるに至った。
第2版では初版の内容を基盤にしつつ、この間に蓄積された多くの科学的知見を追加。
「健康の社会的決定要因」などに関する議論の動向も解説する。「健康格差」の基本を知る上で最適な定番書。
【目 次】
I 健康格差社会と求められる総合的な対策
第1章 健康格差社会──何が心と健康を蝕むのか
放置すれば拡大する社会経済格差
健康格差社会の実像
なぜ社会経済格差が健康に影響するのか
ではどうしたらよいか
社会政策への示唆
第1章のまとめ
第2章 見直しを迫られる健康・疾病観と保健・医療
うまくいかなかった生活習慣病対策と介護予防
なぜうまくいかなかったのか
なぜ個人への介入だけではうまくいかないのか
どのように取り組めばよいか
第2章のまとめ
II 生物・心理・社会(bio-psycho-social)モデルと社会疫学
第3章 生物・医学モデルを超えて──パラダイムとは何か
パラダイムあるいはモデルとは何か
従来型の介護予防モデル
心理・社会・環境要因によるモデル──要介護高齢者は低所得者に多い
健康や疾患をどうとらえるか
2つのフロンティア──見えない世界の「見える化」
第3章のまとめ──本書で取り上げる(研究)課題
第4章 上位層は健康で,底辺層は不健康──社会経済状態と健康
投げかけられた疑問
健康格差は過去の話か
健康格差は物質的欠乏(貧困)が原因か
健康格差は縮小できるのか
第4章のまとめ
第5章 なぜ学歴・職業・所得(社会経済的要因)が健康に影響するのか
関連と因果関係
社会疫学研究の難しさ
影響する5つの経路
複雑に絡み合う関係
今後の研究課題
第5章のまとめ
III 社会と健康をつなぐもの──心の大切さ
第6章 「病は気から」はどこまで実証されているのか──主観的健康感・心理・認知の重要性
主観的健康感がもつ死亡リスク予測力
なぜ主観的健康感は大きな予測力をもつのか
主観的・心理的要因重視の動き
客観と主観の関係の二面性
ストレス認知モデル
心理的ストレスが健康に影響する経路
治療効果が実証されている認知行動療法
第6章のまとめ
第7章 うつは心の風邪か──うつの重要性
うつの重要性
多面的なリスクであるうつ
うつにおける生物学的変化
社会経済的要因とうつ
第7章のまとめ
第8章 ポジティブな「生き抜く力」は命を救う──ストレス対処能力
ポジティブな主観的認知は客観的な回復をもたらす
笑いは健康によい?
人生における指向性
「生き抜く力」と関連する概念
ストレス対処能力,SOC(首尾一貫感覚)
何が「健康」を生み出すのか
「生き抜く力」とストレス対処
学習される「生き抜く力」
外的資源としての社会経済的要因
社会経済的要因と「生き抜く力」
第8章のまとめ
第9章 なぜ結婚や友達は健康によいのか──人間関係と健康
人間関係と健康の位置づけ
社会的ネットワークと健康
結婚と健康
なぜ結婚は健康によいのか
学際的な関心を呼んでいる「人間関係と健康」
社会的ネットワークと社会的サポートと社会参加
健康への主効果とストレス軽減効果
第9章のまとめ
第10章 仕事と健康──職業性ストレスから健康経営まで
職場レベルにおける決定要因──職業性ストレス
法人や企業レベルにおける決定要因
社会・国レベルの決定要因
なぜ職域・職業における健康格差は生まれるのか
第10章のまとめ
IV 社会のありようと健康
第11章 所得格差と健康──相対所得と格差が大きな社会の影響
拡大している経済格差
国際比較研究で発見された格差社会の影響仮説
格差社会の影響──仮説への批判と反論
なぜ所得の不平等が不健康をもたらすのか
第11章のまとめ
第12章 コミュニティの力,再発見!──ソーシャル・キャピタル
注目を集めるソーシャル・キャピタル
ソーシャル・キャピタルとは何か
ソーシャル・キャピタルの下位分類
ソーシャル・キャピタル論を巡る論点──批判と反証
第12章のまとめ
第13章 介入すべきは個人か社会か──ハイリスク・ストラテジーの限界
健康に影響する要因の階層構造
個人への介入の限界
なぜ健康教育の効果は薄いのか──禁煙を例に
ハイリスク・ストラテジーの特徴と限界
ゼロ次予防──健康によい社会づくり
第13章のまとめ
V 社会と健康をめぐる課題
第14章 基礎科学としての社会疫学の課題
社会疫学の2つの課題──科学的合理性と社会的合理性
基礎科学としての疫学
基礎科学としての研究課題
社会に還元するうえでの課題
第14章のまとめ
第15章 医療と公衆衛生・健康政策の見直しに向けた課題
医学・医療界における変化
「健康日本21(第3次)」に向けて
「第3次」に向けた見直しの3つの視点
介護予防政策の見直し
歴史的に考える
第15章のまとめ
第16章 「健康によい社会政策」を考えよう
社会疫学の知見が示唆するもの
社会経済格差の拡大を招く政策の見直し
医学・医療以外の分野での課題
予想される2つの批判
第16章のまとめ
第17章 社会疫学──社会のための科学・21世紀のための科学
社会のための科学
21世紀のための科学
第17章のまとめ
column
エビデンスのレベル
JAGES(日本老年学的評価研究)の概要
教育年数が短いほど「健診を受診したことがない」
システマティック・レビューとメタ分析
社会階層別のうつ状態の分布
お金持ちは転びにくい!?
社会階層が低い人ほど「閉じこもり」が多い
要介護者の半数は,リスクがない状態から発生している
低所得であるほど社会的サポートの授受が少ない人が多い
男性の1人暮らしにはうつ状態が多く,1人暮らしは低学歴層に多い
教育年数・所得とうつ
ストレス対処能力SOCと健康,そして社会階層
結婚と心理的健康──背景としての社会経済的要因
プロジェクトとイニシアティブ