老年看護学 健康生活を支える高齢者理解と看護援助 第3版**医歯薬出版/太田 喜久子/978-4-263-23772-4/9784263237724**
発行 2023年1月
判型:B5判 320頁
ISBN 978-4-263-23772-4
高齢者の健康的な日常生活と療養生活を支えるための知識と看護援助のポイントを1冊にまとめたテキスト
●高齢者を取り巻く社会状況,高齢者の健康やQOLに関する国の統計データから〈高齢者像〉をとらえます.そして,“その人の生きてきた歴史”と“その時々の健康状態”を統合して〈高齢者個人〉をとらえることを学べます
●在宅,長期療養施設,病院など,多様化する高齢者の生活する場の特徴や利用できるサービスを解説します.とくに,サ高住やグループホームなどの高齢者向け住宅,介護保険3施設,介護医療院については詳しく記述しました
●加齢による機能変化と生活への影響について,①息をする,②食べる・飲む,③排泄する,④眠る,⑤動く,⑥見る,⑦話す・聞く,⑧皮膚を保つ,⑨記憶する・考える(認知),⑩こころ の10項目に分けて解説しています.各項目の冒頭には,高齢者との接点が少ない学生を想定して,加齢による機能変化と生活への影響をイメージできるエピソードを収載しました.また,各項目において高齢者によくみられる代表的な疾患を取りあげ,病態から看護援助まで詳述しています
●感染対策や服薬管理など“健康の維持”にかかわる課題や,交流の促進や家族介護,意思決定など“豊かな生涯の全う”にかかわる課題に対して,高齢者や家族とのかかわり方を含めた看護援助のポイントをまとめています.フレイルやサルコペニア,ポリファーマシー,エンド・オブ・ライフケアに関連する概念などの新しいトピック,高齢者を支援する制度や社会保障についても詳しく解説しました
【目 次】
第1章 高齢社会に生きる高齢者
第1節 高齢社会と高齢者
(1)高齢社会
(2)生涯発達論からみた老年期と高齢者
1)ハヴィガースト
2)ペック
3)エリクソン
第2節 高齢者を理解する視点
(1)独自の,2つとない生き方をしてきた歴史をもつ
(2)さまざまな自立の様相のなかにある
(3)機能が徐々に衰退するプロセスにある
(4)生命と向き合う
(5)強み・もてる力をもつ
(6)その人なりの人生の統合を行う
第2章 高齢者の生活の場
第1節 生活環境の特徴,高齢者の健康生活への影響
(1)環境とは
(2)地域の特徴と高齢者の生活
1)都市部
2)農山村部
(3)生活環境と高齢者の健康生活
第2節 高齢者の健康状態の変化と生活の場の変化
(1)自宅で暮らす高齢者
1)一人暮らしの高齢者
2)夫婦二人暮らしの高齢者夫婦
3)複数世帯で暮らす高齢者
4)住居の形態による特徴
(2)高齢者が暮らす自宅以外の生活の場
(3)高齢者向け住宅の種類と特徴
1)サービス付き高齢者住宅
2)養護老人ホーム
3)軽費老人ホーム
4)有料老人ホーム
5)グループホーム
(4)高齢者が暮らす療養の場の種類と特徴
1)特別養護老人ホーム・介護老人福祉施設
2)介護老人保健施設
3)介護療養型医療施設・介護医療院
(5)治療の場で暮らす
第3章 健康生活モデル
第1節 健康生活モデルとはなにか ……モデルの構造と構成要素
(1)健康生活モデルのねらい
(2)健康生活モデルの構造
1)生活の3つの要素
2)生活の中心にある「核になるもの」
3)健康生活の状態とは
4)健康生活モデルの定義
(3)健康生活モデルの構成要素
1)健康生活モデルの構成要素と内容
2)健康生活モデルの構成要素間の関係
第2節 健康生活モデルの活用 ……高齢者の「健康生活の全体像」の把握
(1)健康生活の全体像を把握する鍵~自立の状態,強み・もてる力~
1)自立の状態
2)強み・もてる力
(2)健康生活の全体像を把握する際の留意点~全体性,個別性,継続性と変化~
1)全体性
2)個別性
3)継続性と変化
(3)高齢者の「健康生活の全体像」の把握例
1)現在のAさんの状況(健康生活の各要素の状態)
2)強み・もてる力
3)Aさんの「健康生活の全体像」の状態
第4章 高齢者の健康生活状態の特徴,その変化と看護援助
序説 健康生活モデルにもとづく高齢者の看護援助
(1)高齢者ケアの基本
1)高齢者への尊重の念をもつこと
2)生と死に向き合っている高齢者を支えること
3)高齢者の強み・もてる力をいかすこと
4)高齢者を取り囲む人びとや多職種連携でケアの協働作業を行っていくこと
(2)健康生活モデルにもとづく高齢者の看護援助
1)健康生活モデルを用いた看護援助のねらい
2)健康生活モデルを用いた看護援助の流れ
第1節 息をする
(1)「息をする」の加齢による変化
1)気道の変化
2)肺実質の変化
3)呼吸にかかわる筋肉・骨の変化
(2)「息をする」の機能変化がもたらす生活への影響
1)息切れ(運動時)
2)呼吸困難感(運動時以外)
(3)「息をする」の機能変化への援助
1)胸郭を広げる
2)ガス交換機能の維持・増進
3)呼吸困難感への対応
(4)「息をする」に起こりやすい病的な変化と援助
A 肺炎
B 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
C 呼吸不全
第2節 食べる・飲む
(1)「食べる・飲む」の加齢による変化
1)運動機能(関節の可動性や柔軟性)の変化
2)咀嚼・嚥下機能の変化
3)感覚的な変化
4)体構成成分の変化
(2)「食べる・飲む」の機能変化がもたらす生活への影響
1)活動のためのエネルギーや水分の摂取不足
2)生きる意欲への影響
(3)「食べる・飲む」の機能変化への援助
1)嚥下を容易にする姿勢の保持
2)食塊を形成できるような食物の適度な湿り気と量
3)食べる雰囲気とタイミング
4)好みの重視
(4)「食べる・飲む」に起こりやすい病的な変化と援助
A 脱水
B 摂食嚥下障害
第3節 排泄する
(1)「排泄する」の加齢による変化
1)排尿にかかわる機能の変化
2)排便にかかわる機能の変化
(2)「排泄する」の機能変化がもたらす生活への影響
1)排尿機能の変化による生活への影響
2)排便機能の変化による生活への影響
(3)「排泄する」の機能変化への援助
1)排尿の問題に対応した治療と援助
2)便秘への援助
3)下痢への援助
(4)「排泄する」に起こりやすい病的な変化と援助
A 尿失禁
B 前立腺肥大症
第4節 眠る
(1)「眠る」の加齢による変化
1)中枢神経系の退行性変化
2)全身の活動性・活動量の低下
3)睡眠を妨げる疾患
4)薬物による影響
5)心理的なストレス
(2)「眠る」の機能変化がもたらす生活への影響
1)睡眠の質の変化
2)寝起きの変化
3)生活リズムの変調
4)生活活動全体への影響
(3)「眠る」の機能変化への援助
1)睡眠の調整
2)活動の維持 ……適度な運動量とのバランス
3)生活リズムの調整
4)心配ごとの解消,ストレスの発散
5)身体的な苦痛(痛み)の除去
(4)「眠る」に起こりやすい病的な変化と援助
A 不眠:眠れない状態
B 夜間せん妄:眠らない状態
第5節 動く
(1)「動く」の加齢による変化
1)骨・関節・筋の退行性変化
2)刺激反応性の低下と反応の遅延
(2)「動く」の機能変化がもたらす生活への影響
1)移動方法の変化
2)転倒リスクの増大 ……バランス能力の低下,筋力の低下
3)活動耐性の低下と身体の各機能への影響
(3)「動く」の機能変化への援助
1)移動の方法への援助
2)環境の調整
3)活動耐性の維持
4)痛みへの対処
5)生活の質(活動の質)の維持
(4)「動く」に起こりやすい病的な変化と援助
A 運動機能障害
B 腰痛症
C 変形性関節症(変形性膝関節症,変形性股関節症)
D 大腿骨頸部骨折(およびその他の骨折)
E 廃用症候群,寝たきり
F 中枢神経障害(脳卒中片麻痺,パーキンソン病)
G 関節リウマチ
第6節 見る
(1)「見る」の加齢による変化
1)視覚機能の変化
(2)「見る」の機能変化がもたらす生活への影響
1)視覚の変調による生活の変化
2)視覚情報を処理する過程の変調
(3)「見る」の機能変化への援助
1)眼鏡による視力の調整
2)視覚変調に合わせた行動,動作,生活環境の調整
3)コミュニケーション
(4)「見る」に起こりやすい病的な変化と援助
A 白内障
B 緑内障
C 加齢黄斑変性症(網膜黄斑変性症)
D 糖尿病網膜症
E 脳血管障害による半側空間無視・半盲
第7節 話す・聞く
(1)「話す・聞く」の加齢による変化
1)話すの変化
2)聞くの変化
(2)「話す・聞く」の機能変化がもたらす生活への影響
1)コミュニケーションの停滞と混乱,不足
2)精神機能・活動性のさらなる低下
(3)「話す・聞く」の機能変化への援助
1)コミュニケーションの工夫
2)補聴器の使用
3)環境の調整
(4)「話す・聞く」に起こりやすい病的な変化と援助
失語症
第8節 皮膚を保つ
(1)「皮膚を保つ」の加齢による変化
1)皮膚表面の変化
2)外皮系の機能的な変化
3)末梢神経系の退行性変化(末梢神経の刺激受容体の数の減少)
(2)「皮膚を保つ」の機能変化がもたらす生活への影響
1)乾燥による掻痒感(かゆみ)
2)触覚の鈍麻による巧緻性の変化
3)温度に対する順応性の変化
4)皮膚の裂傷 ……スキン-テア,治癒遅延,内出血斑
5)爪の変形・肥厚・巻き爪
(3)「皮膚を保つ」の機能変化への援助
1)スキンケア
2)体温調節 ……衣服の選択と環境調整
3)温熱刺激からの保護
4)下肢の末梢循環を助ける運動と保温
(4)「皮膚を保つ」に起こりやすい病的な変化と援助
A 褥瘡
B 知覚麻痺
C 白癬症
第9節 記憶する・考える(認知)
(1)「記憶する・考える」の加齢による変化
1)記憶の変化 ……覚える,思い出す,忘れるなど
2)知能の変化 ……理解・思考
3)感情・気分の変化 ……こころ
4)行動の変化
(2)「記憶する・考える」の機能変化がもたらす生活への影響
1)活動の質の変化
2)人との交流機会・活動量の減少
3)生活上のリスクの増大
(3)「記憶する・考える」の機能変化への援助
1)記憶,理解力,意欲などの変化
2)環境の調整
(4)「記憶する・考える」に起こりやすい病的な変化と援助
A 認知症
B 高次脳機能障害
第10節 こころ
(1)「こころ」の加齢による変化
1)脳の加齢変化とこころの変化
2)心理社会的な要因とこころの状態
(2)「こころ」の機能変化がもたらす生活への影響
(3)「こころ」の機能変化への援助
1)関心を寄せて見守る
2)こころの変化を受け入れてかかわる
3)環境の調整
(4)「こころ」に起こりやすい病的な変化と援助
うつ
第5章 高齢者の健康生活を維持するための課題と調整
第1節 高齢者と薬
(1)高齢者の身体的特徴をふまえた薬物療法
(2)加齢による薬物動態の変化
1)吸収absorption
2)分布distribution
3)代謝metabolism
4)排泄excretion
(3)高齢者の生活と薬物療法
1)高齢者の薬物療法の特徴
2)ポリファーマシー
(4)安全な薬物療法のために必要な支援
1)服薬に影響を及ぼす要因
2)生活状況に合わせた薬物療法への支援
第2節 高齢者と感染症
(1)感染症と身体の防御機能
1)感染症とは
2)感染症成立の3要因
3)病原体の由来 ……感染経路と発症
(2)感染対策の基本
1)感染経路の遮断
2)高齢者介護施設での感染対策
3)高齢者自身と家族によるセルフケア
(3)高齢者によくみられる感染症と看護援助
A 尿路感染症
B 感染性胃腸炎(ノロウイルス)
C 帯状疱疹
第3節 高齢者と倫理
(1)高齢者と倫理の土台となる知識
1)倫理
2)看護実践にとって重要な倫理原則
3)アドボカシー
(2)高齢者と倫理についてのおもな課題
1)意思決定支援
2)身体拘束
3)虐待
(3)倫理的課題の検討・対応を導く方法 ……倫理的意思決定
第6章 豊かな生涯を全うするための援助
第1節 交流を促す援助
(1)老年期の喪失体験
(2)高齢者のQOLに影響するもの
(3)老年期における人との交流の特徴
1)老年初期における人との交流の変容
2)身体機能の衰えによる人との交流の変容
3)終焉を迎えるまでの人との交流
(4)交流の場
1)近隣や地元の人びととの付き合い
2)趣味や関心をいかした集団活動への参加
3)若年高齢者としての社会貢献
(5)交流の機会を維持するための支援
1)地域情報の提供
2)交流のきっかけをつくり,交流を続けられる支援
3)交流の場における具体的なかかわり
4)心理的援助
第2節 介護が必要な高齢者と家族への援助
(1)介護が必要な高齢者と家族の状況
1)高齢者の家族形態の変化
2)介護が必要な高齢者のいる世帯
3)介護者の状況
(2)介護者の介護時間と介護負担
1)介護ストレスの本質
2)精神的ストレス
3)身体的ストレス
(3)高齢者を介護している家族の理解と支援
1)家族のアセスメント
2)家族への支援
3)介護者への支援
第3節 その人らしい最期を迎えるための援助
(1)高齢者の終末期とその特徴
1)高齢者と死
2)終末期の定義
3)高齢者の終末期の特徴
(2)終末期にある高齢者の看護
1)その人らしい最期を迎えるための看護に関する倫理的問題
2)その人らしい最期を迎えるための看護におけるケアのポイント
3)家族への看護
4)高齢者に多くみられる終末期の症状と看護
第7章 高齢者の健康生活を支える制度と人材
第1節 高齢者の健康生活を支える制度
(1)高齢者にかかわる保険医療福祉の変遷
1)高齢化の現状
2)老人福祉法の制定とその発展
3)医療保険制度
(2)介護保険制度
1)介護保険制度創設の背景
2)介護保険制度の基本的な考え方
3)介護保険制度の仕組み
(3)地域包括ケアシステム
1)地域包括ケアの原点
2)地域包括ケアシステムの構築と概要
3)地域包括ケアシステムを支える地域支援事業
4)医療と介護の連携
(4)成年後見制度
1)後見制度の類型
2)成年後見制度の利用促進
3)日常生活自立支援事業
第2節 高齢者の健康生活を支える人材
(1)高齢者の保健医療福祉にかかわる人材
(2)多職種による連携協働
1)チームワークとは
2)連携とは
(3)退院の支援と地域連携
1)退院支援に向けた連携
2)在宅医療との連携
第8章 健康生活モデルの展開
事例1 認知症と糖尿病があるPさん……「食」に対する満足感へのはたらきかけ
事例2 手術治療を受け,退院後に外来通院をするQさん……生活適応に向けたはたらきかけ
事例3 施設で引きこもりがちな生活を送るRさん……園芸活動を活用した生活の活性化へのはたらきかけ
事例4 入院して治療を受けているSさん……離床(排泄の自立)へのはたらきかけ