急性中毒標準診療ガイド 新版**へるす出版/日本中毒学会/978-4-86719-071-5/9784867190715**
発行 2023年7月
判型:B5判 376頁
ISBN 978-4-86719-071-5
監修:一般社団法人 日本中毒学会
編集:日本中毒学会学術委員会 / 急性中毒標準診療ガイド改訂委員会
初版発行から15年『新版 急性中毒標準診療ガイド』待望の刊行!
2008年に刊行された『急性中毒標準診療ガイド』(日本中毒学会編)は、わが国の中毒診療の基本として常に参照すべきものとされてきました。しかし時代の変遷とともに診断や治療の潮流も変化し、それらに対応しきれていない点から長らく改訂が強く要望されてきました。初版刊行から15年、本書は最新の知見、エビデンスをふまえ、新版として新たに編集したものです。
【本書のポイント】
・中毒診療もチーム医療・多職種連携が大切――との観点から、院内体制、各職種の役割、整備すべき資器材や設備について具体的に記載しました。
・安全確保、ABCDE に沿ったprimary surveyを重視する考え方については前版を継承しつつ、現在の医療環境に合わせてモニタリング手法や検査方法などについてアップデートを行いました。
・複数の解毒・拮抗薬が新たに承認され、わが国における解毒・拮抗薬の状況も大きく変化してきました。現在わが国で使用されている解毒・拮抗薬について、最新の知見をふまえ、標準的な使用方法を示しました。
・わが国の臨床現場で主に用いられる5つのトキシドロームについて、イラストや表で示してわかりやすく解説しました。
・簡易分析法について、キットの種類やそれぞれの特徴について詳述しました。
・そのほか、中毒学教育の現状と展望、中毒診療と災害対応、症例報告の方法なども、今回の改訂で新たに取り上げました。
第Ⅰ章 急性中毒初期診療総論
1 急性中毒初期診療総論
中毒とは何か
急性中毒の疫学
曝露経路
急性中毒治療の原則
対症療法
吸収の阻害および排泄の促進
簡易分析法
試料採取と保存
中毒発生状況の把握と情報収集
トキシドローム
インフォームドコンセント
中毒診療と再発防止
第Ⅱ章 診療体制の構築
1 チーム医療
はじめに
中毒診療における多職種連携体制
中毒診療における各職種の役割
2 院内体制
はじめに
資器材・薬剤
施設・設備
体制・部門
3 日本中毒情報センターの概要
はじめに
中毒診療における情報収集:JPIC による情報提供
症例情報の共有により実現するtoxicovigilance
まとめ
第Ⅲ章 急性中毒の標準治療
1 全身管理
1)primary survey
急性中毒の初期診療手順
急性中毒患者に対する初期対応
まとめ
2)気道管理
気道確保が必要な状況
気道確保の方法
気管挿管困難
まとめ
3)呼吸管理
急性中毒生じる呼吸障害の原因
呼吸障害の臨床症状・徴候
検査・モニタリング
治療
まとめ
4)循環管理
急性中毒生じる循環症状
急性中毒による循環障害への対応
中毒事例に対する脈拍異常・循環不全に対する特殊治療
まとめ
5)痙攣対策
痙攣とてんかん発作
中毒に伴う痙攣の疫学
中毒におけるてんかん発作、痙攣の病態
てんかんの発作型と脳波、CT 所見
中毒時の痙攣の治療・管理
6)体温管理
急性中毒での高体温・低体温
急性中毒による高体温・低体温の治療
高体温をきたす特殊疾患
まとめ
7)標準的なモニタリング
急性中毒におけるモニタリングの意義
急性中毒患者に考慮されるモニタリング法
体温管理に重要なモニタリング 69
2 吸収阻害
1)消化管除染の位置づけ
消化管除染の評価におけるPosition statements の影響
消化管除染の評価に関する今後の展望
『急性中毒標準診療ガイド』改訂のポイント
Position statements の背景と消化管除染のエビデンス
2)胃洗浄
背景とエビデンス
適用
方法
合併症
禁忌
3)活性炭
背景とエビデンス
適用
方法
合併症
禁忌
4)腹部CT 検査と上部消化管内視鏡
背景とエビデンス
適用
方法
禁忌
5)催吐、腸洗浄、緩下剤
催吐
腸洗浄
緩下剤
3 排泄促進
1)体内動態
薬物動態学とは
薬物動態学の必要性
薬物動態学パラメータ
中毒時の薬物動態学
まとめ
2)強制利尿(forced diuresis)と尿のアルカリ化
薬毒物の尿中排泄
強制利尿と尿アルカリ化による尿中薬毒物排泄促進のメカニズム
強制利尿・尿アルカリ化の適用症例
方法
まとめ
3)急性血液浄化法
急性中毒に対する血液浄化法の適用
血液浄化法の選択
禁忌
EXTRIP workgroup について
血液浄化法が適用となる中毒
血液浄化法を考慮してもよい中毒
血液浄化法の適用がない代表的な薬毒物
まとめ
4 解毒・拮抗薬
解毒・拮抗薬の評価
未承認薬の国内承認・適用拡大
病院での在庫
インフォームドコンセント
[各論]
アセチルシステイン/亜硝酸アミル・亜硝酸ナトリウム・チオ硫酸ナトリウム/ヒドロキソコバラミン/プラリドキシム[PAM]/アトロピン/フルマゼニル/ナロキソン/ホメピゾール/エタノール/メチレンブルー/ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸鉄(Ⅲ)水和物(不溶性プルシアンブルー)/ジメルカプロール/デフェロキサミン/ペニシラミン/エデト酸カルシウム二ナトリウム/グルコン酸カルシウムゼリー/グルコン酸カルシウム・塩化カルシウム/ピリドキシン・リン酸ピリドキサール/はぶウマ抗毒素/まむしウマ抗毒素/ヤマカガシウマ抗毒素/ビタミンK/4因子含有プロトロンビン複合体(4-Factor PCC)/プロタミン硫酸塩/静注用脂肪乳剤/抗ジゴキシン抗体/酸素(O2)
第Ⅳ章 トキシドロームと検査・分析
1 情報確認
中毒患者を診療するときに確認すべき情報について
確認すべき項目(全般)
確認すべき項目(分野別)
2 トキシドローム:toxidrome
トキシドロームとは
さまざまなトキシドローム
臨床検査との併用
集団中毒におけるトキシドローム
3 簡易尿中薬物検査キット
はじめに
尿中薬物簡易検査の仕組み
キットの種類
偽陽性と偽陰性について
4 実用的分析法
1)医薬品
(1)ベンゾジアゼピン系薬剤
(2)バルビタール系薬剤
(3)ブロモバレリル尿素
(4)三環系・四環系抗うつ薬
(5)アセトアミノフェン
(6)サリチル酸塩:とくにアスピリン
(7)カルシウム拮抗薬
(8)ジフェンヒドラミン
(9)選択的セロトニン再取り込み阻害薬
(10)カフェイン・テオフィリン
2)農薬
(1)有機リン系殺虫剤
(2)カーバメート系殺虫剤
(3)グルホシネート
(4)グリホサート
(5)パラコート
3)工業用品・その他
(1)メタンフェタミン
(2)メタノール
(3)エチレングリコール
(4)シアンおよびシアン化合物
(5)ヒ素化合物
第Ⅴ章 教育
1 卒前教育
1)薬剤師養成における教育
はじめに
薬剤師6 年生教育へ至るまでの変遷
薬学6 年生教育の概要
薬学教育モデル・コアカリキュラムの概要と中毒学領域
中毒学領域の国家試験問題
薬学部のweb シラバスからみた中毒学教科の現状
薬学における中毒学教育の必須項目
中毒学教育の充実のために日本中毒学会ができること 275
2)医師養成における教育
はじめに
試験制度からみた医学部教育
コア・カリキュラムからみた中毒学教育
医師国家試験からみた中毒学教育
医学部教育から専門医制度へ
日本中毒学会が医師養成過程における中毒学教育で果たすべき役割
3)臨床検査技師養成における教育
はじめに
臨床検査技師養成所指導ガイドラインで規定した臨床検査技師教育の内容と必要機器
臨床検査技師国家試験出題基準
臨床検査技師の卒前教育におけるさまざまな取り組み
臨床検査技師の卒後教育における中毒学教育
4)救急救命士養成における教育
救急救命士と中毒診療
救急救命士の卒前教育における中毒
救急救命士に期待される役割と再教育
2 卒後教育
中毒診療教育の必要性
日本中毒学会認定制度:認定クリニカル・トキシコロジスト
中毒診療のminimun requirement とは
日本中毒学会が実施してきた急性中毒標準治療セミナーとこれから
第Ⅵ章 中毒診療と災害対応
1 現場での初期対応と安全確保
中毒に対する病院全診療
現場での初期対応
病院との連携
まとめ
2 C(化学)災害・テロ対応(薬剤含む)
危険性物質(HAZMAT)による災害
化学テロなどによる災害
問題となる物質
C(化学)災害時の対処
治療方針
3 多数傷病者発生時のトリアージ
4 中毒災害時の診療への備え
平時の訓練
災害対応時に考慮すべきこと
災害対応後に考慮すべきこと
第Ⅶ章 中毒情報と臨床研究
1 日本中毒情報センター受信報告からみた疫学
はじめに
中毒事例発生状況
家庭用品
医薬品
自然毒
工業用品
農薬
食品、その他
小児と高齢者の中毒
今後の課題
2 情報源
中毒・災害情報
化学物質
自然毒
医薬品
ドラッグ
その他
3 症例報告・臨床研究の方法 333
はじめに
現代の研究デザイン
症例報告を書くための情報収集
ECTRにおけるチェックリスト
倫理的指診
まとめ