一筋縄ではいかない症例の肺がん治療**メジカルビュー社/倉田 宝保/978-4-7583-2237-9/9784758322379**
発行 2023年9月
判型:A5判 220頁
ISBN 978-4-7583-2237-9
編集:倉田 宝保 / 吉岡 弘鎮
手強く悩ましい症例にエキスパートはどう挑む?
“一筋縄ではいかない”肺がんの悩ましい症例でエキスパートがどのように考え,どういった点を注意しているのか,ポイントを押さえてわかりやすく解説。
肺がん罹患者には,高齢患者や合併症をもつ患者が多いが,エビデンスが乏しく,ガイドラインで明記されていない症例も多くみられる。また,まれな組織型例や転移例など,判断の難しい場面も多い。そんな悩ましい症例に対して外科医と内科医の双方の視点から「ここが一筋縄ではいかない」と症例ごとにポイントを整理し,エキスパートがどう考えどう対処・治療しているかを丁寧に解説した。臨床現場の「困った」にずばり応えた1冊!
【目 次】
Part A 肺がん治療体系概略
1. 小細胞肺がん(SCLC)の治療体系
2. 非小細胞肺がん(NSCLC)の治療体系
Part B 肺がん治療,どうする?
PS 不良
Point1 PS と手術
Point2 PS と手術リスクフローのみでは語れない患者背景
Point3 本人と家族との関係
PS 不良
Point1 PS 不良でも高い効果が期待でき,有害事象が少ない薬剤は投与する価値がある
Point2 PS 不良ががんによるものか否かを判断する
Point3 治療のリスクを患者,家族が許容できるかを判断する
超高齢者
Point1 高齢者や超高齢者の定義
Point2 高齢者におけるfit かvulnerable かの判断基準
Point3 vulnerable な高齢者における術式選択
Point4 fit な高齢者における術式選択
超高齢者
Point1 意思決定能力,認知機能低下を評価する
Point2 分子標的薬はMCI の有無を確認してから投与を検討する
Point3 ICI は毒性管理に十分注意する
Point4 PS 良好患者であっても,積極的治療を行う前に高齢者機能評価を実施する
化学放射線療法ができない症例
Point1 放射線肺臓炎に対する考え方
Point2 放射線関連心疾患に対する考え方
Point3 放射線脊髄炎に対する考え方
Point4 放射線食道炎に対する考え方
Part C 一筋縄ではいかない合併症例,どうする?
間質性肺炎合併
Point1 術後間質性肺炎急性増悪,術後慢性呼吸不全,高悪性度肺がんを合併しやすい
Point2 肺葉切除か縮小手術か
Point3 根治的化学放射線療法か手術か
間質性肺炎合併
Point1 間質性肺炎の診断と治療
Point2 がん薬物療法:細胞傷害性抗がん剤
Point3 がん薬物療法:ニンテダニブ
Point4 がん薬物療法:ICI
肺気腫・重症呼吸不全・呼吸器疾患合併
Point1 低肺機能,肺気腫合併例に対する肺切除
Point2 呼吸機能にみるMI の定義とは?
Point3 術式の選択:肺葉切除か縮小切除か?
Point4 SBRT 後の局所再発に対するサルベージ手術
肺気腫・重症呼吸不全・呼吸器疾患合併
Point1 重症COPD 患者でも,PS が保たれていれば細胞傷害性抗がん剤を検討するが,レジメンの選択には注意
Point2 COPD 患者ではICI の有効性が高い可能性があるが,肺臓炎とのリスク・ベネフィットを踏まえて慎重に
Point3 COPD の治療を忘れずに
Point4 ICI 投与の際は常に結核発症のリスクを念頭に
Point5 結核治療中は肺がん治療を続けるか,中止するか
Point6 リファンピシンとの相互作用に注意
肝障害合併
Point1 肝不全患者は手術合併症や周術期管理に注意
Point2 肝不全患者では出血量増加や組織の脆弱性が予想されるため,術中出血を防ぐ工夫が必要
Point3 HCV 陽性であることを踏まえた術前検査や医療者の対応
肝障害合併
Point1 既存の肝障害合併時は化学療法の用量調節が必要
Point2 化学療法による肝障害に対する治療と,その後の化学療法
Point3 小細胞肺がんによる多発肝転移による肝機能障害
腎障害・透析合併
Point1 複数の併存疾患合併例が多いため,心血管系をはじめ,術前リスク評価が重要である
Point2 術後合併症予防のため,術中・術後は体液量を管理する
Point3 AKI と腎障害の進行を予防するため,術後は尿量・体重をモニタリングする
Point4 薬剤の代謝経路・副作用を理解して,使用薬剤と使用量を選択する
Point5 AKI 発症を予防し,CKD の悪化を防ぐ
腎障害・透析合併
Point1 がん患者の適切な腎機能評価方法は何か
Point2 腎機能低下時に用量調整や投与回避が必要な抗がん剤
Point3 血液透析患者に対するがん薬物療法はメリットがあるのか
循環器疾患合併
Point1 生活習慣病の併発を把握し,緻密な周術期診療・管理を行う
Point2 薬剤の休止など,各科横断的なアプローチが必要
Point3 手術術式をどうするか検討する
Point4 周術期のリスクを回避する
循環器疾患・重度高血圧合併
Point1 労作時呼吸苦の原因は?
Point2 左室駆出率(LVEF)が低下した心不全の薬物療法
Point3 心血管合併症の評価
Point4 肺がん治療薬の選択について
糖尿病合併
Point1 第一に肺がん治療,次に血糖コントロール
Point2 併存症に優先順位をつけて術後管理を行う
Point3 迷ったら断端被覆を
糖尿病合併
Point1 肺がん診療(内科)における糖尿病治療の考え方
Point2 細胞傷害性抗がん剤投与時の血糖上昇
Point3 ICI による1型糖尿病の発症
Point4 分子標的薬による耐糖能異常
Point5 肺がんによるシックデイや悪液質への対処
血液疾患合併
Point1 血小板減少による出血リスク
Point2 治療抵抗性の血小板減少への対応
Point3 術後出血に対する早期対応を心がけた術後管理
血液疾患合併
Point1 血液疾患合併の有無の鑑別
Point2 肺がんと合併疾患のいずれの治療を先行するか
Point3 合併疾患によって適切な肺がん治療薬の選択
Point4 肺がん症例に合併する血液疾患についても治療法を理解する
喀血がある症例
Point1 喀血制御の選択肢
Point2 術中の他肺葉の血液流入からの保護
喀血がある症例
Point1 肺がんに伴う血痰・喀血の重症度判断
Point2 実施すべき検査
Point3 肺がんによる血痰や喀血に対する内科的治療
重複がん・多発がん
Point1 多発がん・多重がんに関する疫学と危険因子
Point2 同時多発肺がん(MPLC)の診断
Point3 同時多発肺がん(MPLC)の治療
上大静脈症候群合併
Point1 前・中縦隔の腫瘍の診療では,初診時からSVC 症候群への進展の可能性を考慮する
Point2 薬物療法のみでSVC 症候群の治療が可能な組織型かどうかの見極めが重要である
Point3 気管ステント,SVC ステントの両方の挿入が必要な場合もある
ICI 時代の腫瘍随伴症候群合併
Point1 PNS の診断には,自己抗体の検出が有用である
Point2 PNS に対するICI は慎重な管理のもとであれば使用可能と考えられる
胸水・心嚢水がある症例
Point1 無症候性の胸水貯留は全身治療,症候性の胸水貯留は胸腔ドレナージと胸膜癒着を行う
Point2 胸水貯留を伴う肺がんに対する適切な化学療法のレジメン
Point3 心嚢水貯留に対する適切なマネジメント
てんかんなどの脳転移症状がある症例
Point1 肺がん患者の痙攣をみた場合の鑑別ポイント
Point2 てんかんの病型について
Point3 抗てんかん薬の適応を判断する
Point4 鎮痙後の治療適応について判断する
Point5 治療すべきかせざるべきか,悩むケースが多い
Part D まれな組織型例,どうする?
肺大細胞神経内分泌がん
Point1 病理学的には非小細胞肺がん(NSCLC),臨床的特徴はSCLC
Point2 Stage Ⅰ,Ⅱ,切除可能Ⅲ期の場合
Point3 切除不能stage Ⅲ期の場合
Point4 Stage Ⅳ期の場合
Point5 分子生物学的サブタイプ
多形がん
Point1 急速進行性であり,早期の治療介入が必要である
Point2 細胞傷害性抗がん剤の効果が低い
Point3 ほかのNSCLC と同様に,ゲノム解析が重要である
Point4 ICI を軸とした治療を行う
赤芽球癆あるいは重症筋無力症を合併した胸腺腫
Point1 第一選択は胸腺切除。重症筋無力症合併例ではどう考える?
Point2 胸腺切除術前の重症筋無力症治療はどうすべきか
Point3 胸腺切除ができない場合どうするか:抗がん剤投与や重症筋無力症治療の意義は?
Point4 赤芽球癆合併胸腺腫への対応:限られたデータからどう考えるか?
SMARCA4 欠損肺がん
Point1 SMARCA4 欠損肺がんとSMARCA4?DUT は異なる
Point2 SMARCA4 欠損肺がんの診断方法
Point3 SMARCA4?DUT は臨床的特徴がある
Point4 SMARCA4?DUT 診断におけるピットフォール
Point5 進行期SMARCA4 欠損肺がんの治療法
Point6 SMARCA4?DUT 手術症例における注意点
Part E 転移例,どうする?
脳転移
Point1 10 個を超える多発脳転移
Point2 がん性髄膜炎
Point3 限局型小細胞肺がんでのPCI
Point4 進展型小細胞肺がん脳転移に対する定位照射
骨転移
Point1 骨転移の有無や進展などを把握する
Point2 症状の有無や病的骨折のリスク,脊髄圧迫の有無などで治療方針を検討する
Point3 骨転移の疼痛緩和を行う
オリゴ転移
Point1 オリゴ転移に基準はあるのか?
Point2 オリゴ転移に対する局所治療はどのタイミングで行うのが有効か?
Point3 オリゴ転移に対する局所治療の選択はどうする?
Point4 オリゴ転移に対するICI を含む集学的治療
Part F 一筋縄ではいかない重篤な副作用
サイトカイン放出症候群
Point1 サイトカイン放出症候群(CRS)とは?
Point2 二重特異性T 細胞誘導抗体・CAR?T 細胞療法とCRS
Point3 ICI とCRS
Point4 CRS の鑑別診断
Point5 CRS の重症度
Point6 CRS のマネジメントはステロイドパルス療法+広域抗菌薬