深在性う蝕に対する Vital Pulp Therapy**クインテッセンス出版/辺見 浩一/978-4-7812-1142-8/9784781211428**
発行 2025年8月
判型:A4判 248頁
ISBN 978-4-7812-1142-8
“深在性う蝕に対するVital Pulp Therapy(VPT)”のすべてがこの一冊に集約!
本書では、まだ明確な基準がなくあいまいな治療である“深在性う蝕に対するVital Pulp Therapy(VPT;生活歯髄療法)”を5つのフェーズに分けたうえで、著者考案のディシジョンツリーを用いて、検査、診断、治療選択、患者説明まで、豊富な図と症例写真でわかりやすく解説している。また、VPTを行ううえで、必ずしも歯髄を保存することが患者にとって有益であるとは限らず、“保存するか、抜髄するか”の考え方も存分に学べる一冊となっている。
【目 次】
刊行にあたって
プロローグ 深在性う蝕の基礎知識
Phase 1 歯髄の診断
1.まずは徹底的な情報収集
2.歯髄の生死の判定
a.まずは明らかな失活を見逃さない
b.歯髄生活試験①「歯髄の血流を測定する検査」
c.歯髄生活試験②「歯髄の感覚反応を測定する検査」
d.EPTとCPTの併用による診断精度向上
3.歯髄炎診断の臨床の実際
a.深在性う蝕の歯髄診断①「正常歯髄」
b.深在性う蝕の歯髄診断②「可逆性歯髄炎」
c.深在性う蝕の歯髄診断③「症候性不可逆性歯髄炎」
4.歯髄炎は可逆性か? 不可逆性か?
a.歯髄炎はシームレスな時間的連続体
b.実際の臨床はシームレスでは立ちいかない
c.深在性う蝕の歯髄炎の診断プロトコール
d.自分の臨床境界基準を明確にしよう
5.術前に診断することが困難なルート─無症候性不可逆性歯髄炎─
a.無症候性不可逆性歯髄炎とは?
b.無症候性不可逆性歯髄炎はどうやって起こるのか?
c.無症候性不可逆性歯髄炎をつくらないための臨床を行おう
Phase 1 のまとめ 歯髄診断のこれから
深在性う蝕の生活歯髄療法における患者説明
・適切な患者説明は生活歯髄療法の 1 スキル
Column
①保存か抜髄かの臨床境界基準は何に注目していますか?
②マイクロスコープは患者との重要なコミュニケーションツール
Phase 2 蝕除去法の選択
1.深在性う蝕の除去法の選択
2.う蝕に対する歯髄の反応
a.初期う蝕
b.中等度う蝕
c.深在性う蝕
d.う蝕による露髄
3.現在のう蝕除去基準
a.う蝕検知液
b.う蝕の硬さ
4.術前の歯髄状態を考慮した新しいう蝕除去基準の提案
a.う蝕除去基準に術前の歯髄状態を組み込む
b.う蝕除去を行う前に―窩洞部位を分けて考えよう―
5.術前の歯髄症状とう蝕の進行度で考えられる3つの臨床状態に対するう蝕除去基準の提案
6.非選択的う蝕除去の臨床の実際
a.スプーンエキスカベータによる非選択的う蝕除去
b.回転切削器具(ラウンドバー)による非選択的う蝕除去
Phase 2 のまとめ 深在性う蝕の非選択的う蝕除去の基準を明確に―さまざまな知見に基づいた,自分の臨床指針を確立しよう―
Column
③象牙質についての整理
④う蝕除去は非選択的う蝕除去でもう窩周囲から!
Phase 3 選択的う蝕除去による露髄の回避―ステップワイズエキスカベーション―
1.選択的う蝕除去により露髄を避けるルート ─名称の統一とステップワイズエキスカベーションの意義─
2.ステップワイズエキスカベーションの臨床上のポイント
Clinical Point 1 ステップワイズエキスカベーションの基本術式
Clinical Point 2 適応症を明確にしよう
Clinical Point 3 覆髄材の選択はどのようにするべきか?
Clinical Point 4 Stage 2 への移行期間の設定と考え方
Clinical Point 5 Stage 2 は必ず必要なもの?
3.ステップワイズエキスカベーションに対する懐疑的な意見 ―臨床で採用すべき治療法か?―
a. 選択的う蝕除去による露髄を避ける方法では適切な歯髄保存はできない?
b. ESEとAAEによる,深在性う蝕除去基準に対しての意見の相違
4.ステップワイズエキスカベーションの成功と失敗を臨床例から考察する
Phase 3 のまとめ ステップワイズエキスカベーションを自分の臨床オプションに採用するべき?
深在性う蝕の生活歯髄療法における患者説明
・選択的う蝕除去によって露髄を避けるルートの患者説明
Phase 4 非選択的う蝕除去後の露髄への対応―深在性う蝕への断髄の有用性―
1.深在性う蝕に対する非選択的う蝕除去法の選択
2.直接覆髄
a.直接覆髄の成功の鍵は覆髄材の選択が重要―水酸化カルシウムとMTA
b.覆髄材としてのMTAの特性
c.MTAによる覆髄― Clinical Point ―
Clinical Point 1 歯質や歯周組織の黒変に注意しよう
Clinical Point 2 適切な練和と露髄面へのデリバリーを行おう
Clinical Point 3 最重要ポイントは適応部位の止血の完了
Clinical Point 4 覆髄したMTAの上部封鎖をどう行う?
3.深在性う蝕の露髄に対する断髄の有効性
a.深在性う蝕の露髄は強い汚染をともなう
b.部分断髄における歯髄切断のポイント
4.深在性う蝕による露髄は,直接覆髄と部分断髄のどちらを選択する?
5.なぜ,断髄の成功率は安定するのか?
a.断髄の成功率安定の要因①:露髄面の機械的な郭清が行える
b.断髄の成功率安定の要因②:断髄面を観察し,最後の治療選択が行える
6.断髄面観察を臨床例とともに考察する
a.断髄面観察のClinical Point
Clinical Point 1 明らかに崩壊した壊死歯髄を除外する―誤って診断された壊死歯髄の特定―
Clinical Point 2 出血と止血を確認する―止血がもっとも重要なファクター―
Clinical Point 3 止血後の断髄面の組織性状の観察を行う―断髄面は何を語る?―
b.断髄面観察の撮影条件と環境整備
c.保存の可能性が高い断髄面の代表的所見
d.高度な炎症~ほぼ壊死していると思われる断髄面の所見
7.断髄面の視診と診断のこれから
a.単なる視診から一歩進んだ診断のできる科学的視診へ
b.断髄レベルをさらに進めていくという考え方
Phase 4 のまとめ 深在性う蝕の非選択的う蝕除去後の露髄 ―感染の強い露髄面をいかに封鎖するか―
深在性う蝕の生活歯髄療法における患者説明
・深在性う蝕の非選択的う蝕除去治療の患者説明
Column
⑤不顕性露髄に注意しよう
⑥ClassⅡ直接覆髄とは?
⑦局所麻酔と歯髄の血流は歯髄の視診にどうかかわるか?
Phase 5 症候性不可逆性歯髄炎の兆候を有する深在性う蝕への対応
1.歯頸部断髄
a.深在性う蝕による露髄への歯頸部断髄の臨床操作
b.歯頸部断髄の深在性う蝕の露髄への有効性
c.歯頸部断髄の適応症の拡大を考える
d.深在性う蝕の生活歯に生じる根尖透過像と歯頸部断髄
e.歯頸部断髄に起こる可能性のあるリスクと課題
f.歯頸部断髄のディシジョンメイキング
2.抜髄
a.症候性不可逆性歯髄炎への抜髄の選択
b.歯の保存治療としての抜髄
Phase 5 のまとめ 術前に症候性不可逆性歯髄炎の兆候を有する深在性う蝕への対応
深在性う蝕の生活歯髄療法における患者説明
・術前に症候性不可逆性歯髄炎を有する患者への説明
Column
⑧治療後の患者説明と経過観察の考え方
エピローグ 歯髄保存をあきらめない
List of Cases
Phase 3
CASE 01 ステップワイズエキスカベーション①( 1年4か月の経過観察を行った下顎左側第二大臼歯)
CASE 02 ステップワイズエキスカベーション②(咬合面にヒドゥンカリエスを有する上顎左側第一大臼歯)
CASE 03 Selective carious removal in one stage(可能な限り少ない来院回数を希望した患者に対する歯髄保存治療)
CASE 04 ステップワイズエキスカベーション③(10か月の経過観察を経たStage 2 で露髄を起こした症例)
CASE 05 ステップワイズエキスカベーション④(Stage 1 後の残置したう蝕細菌と歯髄の動態を症例から考える)
Phase 4
CASE 06 直接覆髄(メタルインレー直下ですでに露髄していた下顎左側第二大臼歯)
CASE 07 部分断髄①(咬合面から遠心まで大きく広がったう蝕を有する上顎左側第一大臼歯)
CASE 08 部分断髄②(う蝕除去後に審美改善も兼ねた隔壁を築盛した上顎左側側切歯)
CASE 09 部分断髄③(長期経過観察中の二度のトラブルに対応した上顎左側第一小臼歯)
CASE 10 部分断髄④「予後不良ケース 1 」(断髄後,患者の転居により治療を中断した上顎左側第二小臼歯)
CASE 11 部分断髄⑤「予後不良ケース 2 」(部分断髄では症状の改善が図れなかった上顎左側第一小臼歯)
CASE 12 部分断髄⑥「予後良好ケース 1 」(術前に強い痛みを有し,歯冠破折を起こしていた下顎左側第二大臼歯)
CASE 13 部分断髄⑦「予後良好ケース 2 」(半年前の審美修復により症状が生じた下顎右側第一大臼歯)
CASE 14 部分断髄⑧「予後良好ケース 3 」(上顎左側に複数歯の痛みを抱えて来院した症例)
CASE 15 部分断髄⑨「予後良好ケース 4 」(術前の症状が強く,広範囲のう蝕除去を行った下顎右側第一大臼歯)
Phase 5
CASE 16 歯頸部断髄①(術前に症候性不可逆性歯髄炎の臨床症候,根尖透過像を有する下顎右側第一大臼歯)
CASE 17 歯頸部断髄②(すでに数箇所の露髄をともなっている状態で歯頸部断髄を行った下顎左側第一大臼歯)
CASE 18 抜髄(激しい自発痛と根尖病変を有する下顎左側第一大臼歯)