乳がん薬物療法副作用マネジメント 改訂第2版**メジカルビュー社/増田 慎三(国立病院機構大阪医療センター 乳腺外科科長)/9784758318143**
- 編著
- 増田 慎三(国立病院機構大阪医療センター 乳腺外科科長)
発行 2021年6月
サイズ B6変 /
ISBN 978-4-7583-1814-3
乳がん薬物療法をもっと安全に,もっと効果的に。プロの技術と知識が満載で好評を博した本書がついに改訂。
免疫チェックポイント阻害薬など,最新のレジメンについて解説。
副作用対策についても最新のエビデンス・ガイドラインにあわせて更新し,irAEの章も新たに追加。
遺伝子パネル検査システム,遺伝カウンセリングなど,最近の話題も掲載。
「臨床ですぐに・本当に使える」この一冊で,副作用マネジメントにはもう悩まない!
【目次】
第Ⅰ章 乳がん治療体系概説
①術前・術後薬物療法の概説、ならびに遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の予防医療について -サブタイプ分類に応じた治療戦略を-
②進行再発乳がんに対する薬物療法 -QOLの低下を防ぎつつ、病勢コントロールを目指す-
③放射線治療 -1 乳房温存療法における術後照射、2 乳房切除後の術後照射、3 骨転移・脳転移に対する緩和照射が主な役割-
④緩和医療 -早期からの緩和ケアとがん疼痛緩和-
第II章 レジメン別プロのコツ
1 薬物療法
①Anthracycline系レジメン -心毒性があるため、ドキソルビシン・エピルビシンの総投与量に注意-
②DTX単剤・TC(DTX+CPA)療法 -過敏症・浮腫に注意-
③TAC療法 -骨髄抑制は高頻度。関節痛・浮腫に注意-
④Docetaxel+Carboplatin+Trastuzumab+Pertuzumab(TCbHP)療法 -初回投与時のinfusion reactionに注意-
⑤Paclitaxel単剤(毎週投与法)/Paclitaxel+Carboplatin(PTX+CBDCA)療法 -過敏性反応、末梢神経障害に注意-
⑥nab-Paclitaxel単剤 -末梢神経障害に対し速やかな減量・休薬-
⑦Capecitabine(A法・B法)単剤 / XC(Capecitabine+Cyclophosphamide)療法 -手足症候群に注意-
⑧S-1単剤・UFT単剤 -経口薬ではあるが、下痢・肝機能障害などの副作用には留意-
⑨Eribulin単剤・Eribulin+Capecitabine療法 -忍容性は高い。好中球減少に注意-
⑩CMF療法 -骨髄抑制に注意-
⑪Vinorelbin単剤・Vinorelbin+Gemcitabine併用療法 -血管外漏出に注意。頻度は低いが、間質性肺炎も-
⑫Gemcitabine単剤・Gemcitabine+Paclitaxel療法 -忍容性は良好であるが、間質性肺炎に注意-
⑬CPT-11単剤・併用療法 -下痢・発熱性好中球減少症に注意-
⑭Mitomycin C(MMC)+Methotrexate(MTX)療法 - 抗がん剤を使い切ってしまったときの次の一手-
⑮Ifosfamide - 乳腺悪性葉状腫瘍や軟部肉腫の再発例に対して-
2 分子標的治療
①Trastuzumab単剤・Trastuzumab+Pertuzumab 療法、 薬物療法との併用療法 -infusion reaction、心毒性に注意-
②T-DM1療法 -肝機能障害・血小板減少に注意-
③Trastuzumab Deruxtecan(T -DXd)療法 -薬剤性間質性肺炎を考慮した治療管理を-
④Lapatinib+Capecitabin/Lapatinib+Aromatase inhibitor療法 -手足症候群・ざ瘡様皮疹に注意-
⑤Bevacizumab++wPaclitaxel 併用療法 -高血圧・蛋白尿・出血に注意-
⑥mTOR 阻害薬(Everolimus) -間質性肺炎・口内炎に注意-
⑦CDK4/6阻害薬(Palbociclib)+ホルモン療法 -骨髄抑制に留意しながら、長期使用を目標に上手に減量を-
⑧CDK4/6阻害薬(Abemaciclib)+ホルモン療法 -下痢マネジメントを中心に治療継続を図る-
⑨PARP 阻害薬(Olaparib) -投与開始初期に悪心や好中球減少が多い。治療継続に従い、貧血に留意-
3 免疫チェックポイント阻害薬
①Atezolizumab+nab-PTX - 不慣れな副作用にはチームで対応-
②Pembrolizumab 単剤、Pembrolizumab+化学療法 -irAE に対するチーム医療体制の構築を。初期症状を見逃さない-
4 内分泌療法
①TAM、TAM+LH-RH agonist -更年期症状のサポートをしっかり行い、治療中断を減らす
②Aromatase inhibitors(ANA、LET、EXE) -骨粗鬆症に注意
③Fulvestrant -安全に注射するための体位と注射部位に留意
④Toremifene(TOR)/ high dose TOR -脂質代謝異常・更年期症状に注意
⑤Medroxyprogesterone acetate(MPA) -血栓症、肥満に注意
⑥Prosexol?(エストロゲン療法) -内分泌関連症状に注意
⑦Raloxifene(化学予防) -血栓症、肝機能障害に注意
5 支持療法
①制吐療法 -催吐リスクに応じた予防投与を-
②骨粗鬆症に対するBisphosphonate と Denosumab -顎骨壊死の発症に注意して口腔内衛生に留意-
③骨転移に対する骨修飾薬(BMA) -歯科医との連携が肝要-
④G-CSF -化学療法のFNリスクに応じ、予防投与を考慮。骨痛に注意-
⑤エクオール -乳がん治療に伴う不快な更年期症状を忘れよう-
第III章 副作用症状別プロのコツ
1 全身
①Infusion reaction・アナフィラキシーショック -アナフィラキシーショックに早期対応できるように症状の理解と準備を。infusion reaction予防は投与速度を工夫する-
②倦怠感 -頻度が高く、初診時より定期的なスクリーニングが推奨される-
③筋肉痛・関節痛 -タキサン系・アロマターゼ阻害薬で高頻度に出現。NSAIDsなどでコントロールを-
④ほてり・ホットフラッシュ -ホルモン治療の服薬アドヒアランス維持のために、適切に対処する-
⑤体重増加 -浮腫が原因でなければ、肥満が原因。生活習慣を見直す-
⑥腫瘍崩壊症候群 -抗腫瘍効果の高い治療を開始するときは、治療前後で尿酸値やLDHの確認を行う-
2 消化器
①口腔粘膜炎 -5-FU、アンスラサイクリン系、タキサン系抗がん剤、チロシンキナーゼ阻害薬、mTOR阻害薬(エベロリムス)で発生頻度が高い-
②食欲不振、悪心・嘔吐 -使用する抗がん剤のリスクに応じた制吐薬の予防投与-
③下痢・脱水(腸炎を含む) -下痢を起こしやすい抗悪性腫瘍剤への対処が重要。 白血球・好中球減少時の感染性腸炎にも注意-
④便秘 -腸閉塞をまず除外。下剤で対処-
⑤消化管潰瘍・出血・穿孔 -ベバシズマブ治療中に気をつけたい副作用-
⑥肝機能障害・高ビリルビン血症 -起因薬物の早期中止を-
⑦B型肝炎ウイルス再活性化 -化学療法施行前に再活性化リスクを評価し、適切な対応を-
3 腎・泌尿器
①蛋白尿 -血管新生阻害薬とビスホスホネート製剤で高頻度-
②腎機能障害 -原因となる薬剤などの中止が重要。事前の補液や水分補給は予防につながる-
③出血性膀胱炎 - 排尿指導を含めた万全の予防対策が重要-
4 呼吸器
①間質性肺疾患・薬剤性肺障害 -すべての薬剤で起こりうるため、常に念頭において診療を。 免疫チェックポイント阻害薬のirAEにも注意-
5 循環器
①心機能低下(心不全) -投与薬剤別の心毒性を考慮し、心不全発症を予想した対応を行う
②高血圧(特にベバシズマブ治療に伴う) -降圧薬を有効に使用することで安易にベバシズマブ治療を中断しない-
③血栓症・塞栓症 -タモキシフェン・ベバシズマブ使用時の下腿浮腫はまず血栓症を疑う-
6 血液
①貧血 -骨髄抑制以外の原因による貧血に注意-
②血小板減少症 -骨髄抑制以外の原因の検索が重要-
7 神経・感覚器・精神
①視覚異常 -視覚異常の原因は多岐にわたる。眼科への早めのコンサルトを-
②流涙・涙道閉塞 -QOLを大きく下げるため、特にS-1服用時は要注意。早期発見、治療がカギ-
③味覚障害 -頻度の高い有害事象であり、積極的な診断・サポートが重要-
④末梢神経障害 -抗がん剤の減量・休薬も含め、早期からの予防・対応が重要-
⑤頭痛・めまい・ふらつき -生命にかかわるリスクのある中枢性疾患をスクリーニング、 その後に頻度の高い疾患を鑑別する-
⑥うつ・不安・アカシジア -身体症状の丁寧な緩和と、気持ちに配慮する姿勢が、 がん治療と並行してできる最強の心理的ケアとなる-
⑦不眠 -詳細な情報収集と非薬物的介入を先行したうえで、睡眠薬は単剤で調整を-
⑧認知機能低下・認知障害・ケモブレイン -抗がん剤投与中もしくは治療後に記憶力、思考力、集中力の低下をみとめたら、ケモブレインの可能性を考える-
8 皮膚
①爪囲炎・爪変形・陥入爪 -予防的スキンケアと発症早期からの介入により悪化を防ぎ、化学療法の継続を目指す-
②皮疹・皮膚乾燥・?痒感 -緊急対応が必要な徴候、重症薬疹の症状を見逃さない-
③手足症候群 -痛みが出たら直ちに休薬、これが治療成功の極意-
④色素沈着・光線過敏症 -事前の説明と生活指導を中心に継続的なサポートを-
⑤脱毛 -乳房切除と並ぶ脱毛の苦痛に対して、そのプロセスに応じた支援が大切-
⑥血管外漏出 -リスクを理解したうえでの予防と対処が重要-
⑦静脈炎 -静脈炎は血管外漏出との鑑別が重要-
9 代謝
①浮腫 -ドセタキセル投与時は要注意。がんやがん治療が基礎疾患を悪化させて生じることも-
②抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(中枢性尿崩症とSIADH) -中枢性尿崩症:乳がん脳転移や放射線照射後、頭蓋底骨転移に 続発性中枢性尿崩症を起こしうる SIADH:低Na血症と尿中Na高値をみたらまず疑おう-
③骨量減少・骨粗鬆症 -ホルモン薬投与時には年1回のリスクチェックと生活指導を-
④高コレステロール血症・高トリグリセリド血症 -一部の薬剤でLDL-C値、TG値が上昇する可能性がある-
⑤甲状腺機能異常 -合併症か薬剤が原因なのか鑑別を。 特に分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬に注意-
10 感染
①発熱性好中球減少症(FN) -重症度を評価し、適正な抗菌薬治療を中心とした支持療法を行う-
②侵襲性カンジダ症・ニューモシスチス肺炎 -陰性化するまで、適切な量・期間で抗菌薬を継続する-
③う歯・顎骨壊死(ARONJ) -発症後の治療は困難を極める。予防のための医科歯科連携がなにより重要-
11 生殖器
①月経異常・不正出血 -子宮体がんを見逃さないこと-
②帯下異常・外陰部炎・腟炎・粘膜異常 -化学療法・ホルモン療法の抗エストロゲン作用による外陰部・腟への影響-
③男性機能障害(ホルモン療法に伴う) -男性ホルモンを抑制すると性機能障害のみならず、さまざまな症状が現れる-
12 免疫関連有害事象(irAE)
①免疫関連有害事象総論 -全身に起こりうる。チームで取り組む-
②1型糖尿病 -早期発見・専門医師紹介で重大な状況を回避-
③脳炎、多発根神経炎、重症筋無力症、筋炎 -検査や診断は容易ではない。疑ったら早めにコンサルテーションを-
④下垂体機能低下症、副腎機能低下症 -非特異的症状のため、存在を知っておきたい-
⑤免疫チェックポイント阻害薬関連大腸炎 -まれであるが重症化に注意したい-
第IV章 がん関連症状や宿主状態別対応?プロのコツ
①呼吸困難 -原因除去とともに、呼吸困難を緩和する薬剤を適切に使用する-
②胸膜癒着術 -発熱、胸痛は起こるものとして、事前に準備を-
③腹部膨満 -病態により対処が異なるので適切な病態把握が肝要-
④心嚢液貯留・心タンポナーデ -心嚢液貯留に頻脈、低血圧を伴う場合は心嚢穿刺を-
⑤骨転移に伴う骨痛(がん性疼痛) -骨転移の診断から集学的治療まで-
⑥脊髄圧迫症状 -特徴的な症状の把握と早急な治療を-
⑦頭蓋内圧亢進症状 -速やかに症状の緩和を図るとともに、原因である脳転移に対する処置を行う-
⑧局所進行がんにおける皮膚滲出液 -患者が安心した日常生活を送れるよう支援する-
⑨悪性腫瘍に伴う高Ca血症 (hypercalcemia of malignancy; MCH) -低アルブミン血症を伴うことが多いため、補正Ca値で正確に評価を-
⑩播種性血管内凝固症候群(DIC) -原疾患の治療が最重要。DIC 治療の適応・継続・中止をこまめに評価し、判断する-
⑪高齢者フレイル(Frailty)における薬物療法の工夫 -余命・がん治療の意義・意思決定能力・治療リスク評価を患者ごとに検討する-
⑫肝機能障害を伴う患者における薬物療法の留意点と工夫 -原因検索および治療の利益と不利益を検討し、薬剤を減量するなどの対処を-
⑬腎障害・慢性透析患者における薬物療法の留意点と工夫 -正確な腎機能評価と腎排泄型薬剤の適切な減量が大切-
⑭骨髄機能低下(汎血球減少症)を認める際の治療の工夫 -抗がん剤を投与中は発熱性好中球減少症のリスクを見積もって治療計画を立てる-
⑮抗凝固薬使用中の薬物療法における留意点と工夫 -併存症と併用薬の2つの要素に注目-
⑯妊娠期乳がんの薬物療法における留意点と工夫 -母体に最適ながん治療を行い、かつ胎児への不利益を最小限に-
第V章 乳がん薬物療法との上手なお付き合い?プロのコツ
①感染予防(インフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンなど) -化学療法開始前にワクチン接種を-
②(化学療法に伴う)早期閉経に関する諸問題 -更年期症状、骨粗鬆症、脂質異常症などを伴う。適宜対応を-
③妊孕性低下(挙児希望に備えて) -患者ごとに適切な妊孕性温存療法の選択を-
④薬物療法中の心のケア / 日常生活の工夫 -患者のQOLを低下させない早期からの関わりが重要-
⑤薬物療法中の就労 -長期的な目線で、患者とともに考えることが信頼関係を深める-
⑥薬物療法中の性生活 -薬物療法開始前に適切な情報提供を-
⑦乳がん患者における意思決定支援 -患者・家族の認識、希望を理解し、情報提供・支援を行う-
⑧抗がん剤曝露時の対応 -予防が基本。手洗い、うがいの習慣化を-
⑨外来化学療法室とその運営のコツ -多職種と連携を図り、患者に応じた医療が提供できるよう体制を整える-
⑩がん関連遺伝子パネル検査システム (OncoGuideTMNCCオンコパネルシステム、FoundationOne?CDx がんゲノムプロファイル) -個別化治療実現への礎。経験を増やし、乳がんの biology を知る-
⑪遺伝カウンセリング -正確な遺伝学的情報を伝え、その理解と意思決定を支援する。血縁者に対する影響についても話し合う-
⑫新規薬剤、未承認薬へのアプローチ -研究段階であることを理解し、十分な情報収集を行う-
索引
略語一覧
執筆者一覧